2024年5月13日(月)

プーチンのロシア

2024年2月16日

日本も積極策で行くべきだ

 しかし、私見ではポスト・プーチンの到来が見え始めたら、日本を含めて西側は直ちにロシアとの接触を始めるべきだ。グリエフ教授の指摘する通りロシアが西側に経済制裁の停止を求めてくるのを待つというのも一つの手だ。しかし、西側は全体状況を判断し、自らのイニシアチブで経済制裁の廃止などを決めるべきだ。 

 要するに最初から欧米側はロシア国民に対して「真に友好的で平和的な協力をする用意がある」ことを示すべきだ。そうする方が「欧米は帝国ロシアを潰しにかかっている」というプーチン大統領の口癖になっているプロパガンダを覆すことに役立つ。 

 状況が許す限り、西側は最大至急で行動し、兎に角、あらゆる面で先手を果断に取り続けるべきだ。西側は広くロシア市民社会に呼びかけ、彼らを抱き込むべきである。

 ただちに多様で友好的な対話のチャネルを開設し、接触を拡大し、全ての可能性をロシア社会と十分に議論し、探求し、一緒になって実行に移すのだ。例えば欧州議会は最も適切な時期にロシア人社会全体に対して満腔の友情を示し、全面的な協力の意図を欧州社会の総意として決議することができる。  

 そうしなければ色々と面倒な事態が起きてくる危険がある。 核兵器の管理の問題もある。特に重要なことは広い国土全体がモスクワの指令の下で動くのかという深刻な問題がある。それに中国がどう出てくるかも考慮に入れておくべきだ。 

今度こそ過去の失敗を繰り返さない

 バーゼル大学ベンジャミン・シェンケ教授(東ヨーロッパ史)は第二次世界大戦後、西ドイツは欧米側からマーシャル・プランの形で大規模な民主化支援を受けた。しかしロシアではソ連崩壊後欧米側の支援は無かった。両国の置かれた事情は違うが、このことがロシアで民主化が進まなかった原因だと論じている。

 さらに同教授はロシアは民主化できる。その為に何をどうしたら良いかをロシアの市民社会は既に十分知っている。外国からの指導を必要としていないほどよく知っている、とも論じている('Will Russia ever experience democracy?' Igor Petrov)。

 兎に角、今度こそ失敗してはならない。 追加的にいえば、今度は第二次世界大戦後の国際社会には存在しなかった新しい要素、中国というグローバルな覇権を目指す勢力が存在していることに留意して進む必要がある。その観点からも、西側社会はロシアを欧米民主主義の広範な領域の中に引き込み、共存して繁栄して行くという新次元の国際関係を目指すべきだ。 

 しかもこれは実は今日の欧米指導層には既に広く横溢している議論だ。現に、西側社会の有力な政治指導者、言論人、多くの政策研究機関、フォーリン・アフェアーズ誌などの有力な言論機関が、「ポスト・プーチンのロシア」に対して歴史的な支援をするべきだという議論を過去数年にわたって強力に展開して来ている。 


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