2024年5月14日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年2月22日

 そして、ベトナムの支配者たちの現実主義にとり、政治改革への抵抗は大きなハンディキャップになりつつある。このことは1月初め、共産党書記長および最高指導者でもある79歳のグエン・フー・チョン氏が公の場から姿を消した際に浮き彫りになった。

 ソーシャルメディアは、彼の健康不安説や死亡説で盛り上がった。チョン氏はその後、再登場したが、健康状態および後継者については不透明のままだ。

 投資家らは、チョン氏の主導した汚職対策の影響によるプロジェクト承認の遅れに対して、すでに不満を漏らしている。汚職対策は昨年、国家主席の解任にまで至った。上級共産党員がチョン氏後の将来に不安を感じる中、意思決定が停止してしまうこともありえる。

 チョン氏の地位は26年まで見直されることはなかろうが、この不安定な状況を終わらせるべきだ。党は現実への対応に向けた一つのステップとして、党内民主主義を導入すべきである。チョン氏は彼自身がベトナムの未来にとってリスクになっていることを認識し、党が実務的後継者を選ぶことを容認すべきである。

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日本重視の姿勢に変化はない

 チョン書記長は19年春に脳梗塞を発症し回復したものの、左半身に麻痺が残った状況で職務に復帰した。それが故に、昨年12月26日に訪越した志位和夫日本共産党委員長(当時)との面談以降その動静が不明になり、1月前半訪越したシーバンドン・ラオス首相やジョコ・インドネシア大統領の日程に含まれていなかったことから、重病説や後継者などについてさまざまな憶測を呼んだ。

 同書記長は、21年の前回党大会において、異例の形で3期目(任期5年)を務めることとなったが、病気の後遺症、年齢に鑑み、任期途中での交代もありうると噂されていたことから、多くのベトナム関係者やウオッチャーは、「その時が来た」と思ったと思われる。

 結局、書記長は1月15日開催された国会の開会式に出席し、議長の開会スピーチ後、関係者に支えられて退席した。このことを通じ、書記長の健康と後継者問題、彼が重視する汚職対策に改めて光が当てられることになった。


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