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2013年10月30日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 大衆に背を向けた政権は存続しえない。このところ中国の習近平政権は大いに危機感を持って党の大衆路線教育実践活動と称してあらゆる部門を挙げて党と庶民の関係改善を求める政治活動を行っている。

 それは軍においても同様だ。この数カ月あらゆる部門でプロパガンダと教育活動が展開されるようになっている。これは政府や党、軍と大衆の関係で齟齬が生じている裏返しでもあり、習政権の危機感を示すものでもある。

天安門事件の評価と直面してきた軍将校

 今回はこうした危機感を軍で共有するある将軍による文章を紹介しよう。薄煕来事件によって激震に見舞われた成都軍区の艾虎生副司令員による「最大の危険に対する考え方」『解放軍報』(10月3日付)という文章である。

 興味深いのは成都軍区の指揮官だという点だけではない。彼は天安門事件の際に民衆の暴動鎮圧に戒厳部隊の連隊長として参戦し、切り込み隊長として混乱を極めた天安門広場付近にいち早く乗り込んだ経験を持つ。そして天安門事件をきっかけに出世を遂げてきた。

 このような彼であるから常に天安門事件の評価と直面してきた軍将校として、中国社会における軍と大衆の関係について一家言あるに違いない。民衆に銃口は向けられないと「歴史の罪人には絶対にならない」と出動を拒否して軍事裁判で禁固刑を下された徐勤先将軍とは対照的な人生を歩んできた。そんな将軍が「中国最大の危険は国内にある」と警告しているのだ。彼が言う「最大の危険」とは何か耳を傾けてみよう。

* * *

【『解放軍報』10月3日付・意訳】

 大衆と密接な関係が、我々共産党最大の優勢な点であり、民衆から離脱することが政権を担ってから最大の危険となっている。共産党設立の日から、どんな時期でも、どの指導部でも大衆との密接な関係を維持することが常に共通認識となってきた。我々の党は系統的に大衆路線を確立してきただけでなく、系統的な大衆工作のシステムを確立してきた。ではなぜ大衆から離脱するような現象が依然存在し、時に深刻なのか。こうした問いにうまく答え、解決してこそ「最大の危険」から抜け出すことができるだろう。

 党と大衆に距離が生じたのは次の5つの理由による。

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