佐藤忠男の映画人国記

2013年11月21日

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 和歌山県では、まず女優で日高郡御坊町(現御坊市)から富司純子(ふじすみこ)が出ている。というより、戦争で親が疎開していたこの地で生まれて、5歳で大阪に移っている。

 東映で女優藤純子(ふじじゅんこ)としてデビューしてまもなく仁侠映画の流行となり、「緋牡丹博徒」シリーズでヒットした。女剣戟は古くからあるが、それを従来のアバズレ調ではなく、しとやかに優美に演じたのが人気のもとだった。尾上菊之助(現・菊五郎)と結婚していったん引退したが、のち富司純子と改名してカムバック、喜劇的な味もある素敵な脇役となっている。映画復帰第一作の「あ・うん」(1989年)は向田邦子のテレビドラマの名作の映画化で、昭和10年代のサラリーマン家庭の主婦という、一見ごく地味な中年女性の役だったが、高倉健の演じる夫の親友から密かに慕われているという、なにげない色香の漂わせかたがさすがと思わせたし、相米慎二監督の名作「あ、春」(1998年)での、やはり周囲の人たちをみんななごやかな気持にさせてしまう大奥様ぶりも見事なものだった。

「鉄道員(ぽっぽや)」
価格 4,800円(税抜) 発売元 東映ビデオ
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 小林稔侍が現在の伊都郡かつらぎ町出身。やくざ映画のチンピラ役などの長い修練のあとで渋い味のある名脇役になった。とくに、高倉健の相手役をやるとじつにいい味を出す。高倉健が一途に自分の生き方を貫く主人公を演じるのに、その脇にいて、その生き方をほれぼれと見ながら、自分はもうちょっと世間を分った生き方をするというような役どころである。「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年)の彼の役が正にそうだった。

 俳優の船戸順は和歌山県那賀郡岩出町字船戸の出身で、出身地の地名を芸名にしている。県立和歌山工業高校を出て下津町役場の土木課に勤めていたのが、ミスター平凡コンテストの1位になったことから東宝に入社、東宝の得意のサラリーマンものなどによく出たし、帝劇などの舞台でも活躍した。

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