2024年5月12日(日)

田部康喜のTV読本

2024年3月25日

 異次元の金融緩和をはじめとする金融財政政策をレビューするのは、メディアの役割である。日本がなぜ「失われた30年」に沈んだのか、いまそこから浮上しつつあるのか、今回のマイナス金利の解除は過去のように再び利下げに追い込まれるようなことはないのか。

 テレビ東京の看板番組である「ワールド・ビジネス・サテライト」(WBS)は、今回の政策決定会合の19日の番組のトップで、簡潔ながらも過去の歴史も振り返りつつ評価を試みた。ゲストにみずほ証券チーフアナリストの小林俊介氏を迎えて、日経新聞編集委員の滝田洋一氏が分かりやすい解説をした。

 小林チーフエコノミストは「(今回の金融政策会合の決定は)大手術だった」とみる。「単金金利をマイナスから是正し、かつイールドカーブ・コントロールをやめた。それにとどまらずに今後も国債を買うことによって金利をあまり上がらない姿勢を明らかにした」と、分析した。この結果として「金利が上がらず、株高を維持した。うまく切り抜けた」と。

 滝田編集委員は、金融政策会合の審議委員のなかで2人がマイナス金利の解除に反対した事実は、今後も金融政策について議論を進めるうえで重要だと指摘する。反対したのは、日立製作所の元取締役の中村豊明氏である。

 「(中村氏はメーカー出身であることから)大企業の賃上げが進んでも下請けにそれが浸透するには時間がかかるとみたのではないか。その意味では、銀行や証券出身者ではないメーカーや消費者の代表を審議員に加えるべきだ」と、滝田編集委員は提案する。

 番組では今回のマイナス金利の解除が家計と企業にどのような影響をあたえるのか、具体的な数字を示している。家計では、住宅ローンの利率の引き上げなどでマイナス2400億円、預金金利の引き上げによってプラス1900億円、トータルでマイナス500億円。企業は預金の金利の引き上げはわずかなので、負債の金利の引き上げに絞るとマイナス6700億円となる、としている。

必要となるアベノミクスの検証

 小林チーフエコノミストは、今回の金融政策決定会合について、歴史的な視点を加味しながら次のような3点の指摘をしている。

 まず、過去の利下げはインフレ率がゼロであったりして、「背伸びした金利の引き上げ」だった。今期はインフレ率が約3%、昨年の国民総生産(GDP)が名目で約6%になっていることから無理がない。

 次に、「追い風参考」という言葉をつかっている。つまり賃金の上昇がこれからもしばらく続くのかどうかなど、不確定な要素はある。最後に、日銀の“本音”は、経済をあたためることを貫きながら、円安が行き過ぎないようにしたいという思いがある。


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