2024年4月30日(火)

BBC News

2024年4月10日

米アリゾナ州の最高裁判所は9日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁止する160年前の州法を有効とする判断を示した。

アリゾナ州が州になる前の1864年に制定されたこの法律は、母体の生命が危険な場合を除き、中絶に禁錮2~5年の罰を科せるとしている。

今回の判決により、中絶が可能な州内のすべてのクリニックが閉鎖される可能性がある。影響は女性の健康と、今秋の大統領選挙にも及びうる。

ただ、11月に同州で実施される見通しの住民投票の結果によっては、この判決は取り消されるかもしれない。

「罪のない胎児を守る」

裁判では、長年休眠状態にあった法律が有効なのか、何カ月も議論された。アリゾナ州では2022年、妊娠15週までの中絶を認める州法が成立しており、そうした立法行為によって、160年前の法律は事実上無効化されていると多くの人は主張した。

州最高裁がこの裁判で下級審の判決を見直すと決定したのは昨年8月だった。下級裁判所は、より新たな法律に効力があるとの判断を示していたが、右派の法律事務所「アライアンス・ディフェンディング・フリーダム(自由を守る連盟)」がこれを不服として提訴していた。

州最高裁はこの日、4対2の多数意見で下級審の判決を覆した。1864年に制定された法律には、連邦政府や州政府による保護がなかったため、「現在では強制力がある」という。

「アライアンス・ディフェンディング・フリーダム」や中絶に反対する活動家らは、この「重大な」判決が「無数の罪のない胎児の命を守る」として喜んだ。

ただ、州最高裁は1864年制定の法律の施行は14日後からだとし、裁判を下級裁に差し戻してさらなる審理を求めた。

この法律がどのように施行されるかはまだ明らかになっていない。

同州のケイティ・ホッブス知事(民主党)は昨年、中絶の法的問題についてはクリス・メイズ司法長官(同)に委ねると指示。メイズ氏は、中絶を受けたり実施したすることで州民が訴追されることはないと表明していた。

メイズ氏は9日もその立場を維持し、問題となっている法律を「厳しすぎる」と批評。「アリゾナが州ではなく、南北戦争が続き、女性が選挙権を持てなかった時代の法律を再び押し付ける今日の決定は、私たちの州の汚点として歴史に刻まれるだろう」と述べた。

こうした見解は、米政府や他の民主党有力者らからも示された。アリゾナ州の共和党議員の中にも、今回の判決を懸念する人がいた。

中絶へのアクセスは米国民に広く支持されている。中絶の権利は憲法で保障されているとした「ロー対ウェイド」判決(1973年)を連邦最高裁が2022年に覆してからは、中絶の権利を擁護する民主党が地方選挙や州選挙で好成績を出している。

民主党は11月の大統領選でも、アリゾナ州のような激戦州で、中絶の問題が追い風になることを期待している。

アリゾナ州の活動家らは、今回の問題を11月に住民投票にかけるのに必要なだけの署名はすでに集まっているとしている。

アメリカでは、ロー対ウェイド判決が覆されてからの約2年間で、中絶の権利をめぐって7州で住民投票が実施され、共和党優勢の州を含むすべてで権利擁護派が勝利している。

先週はフロリダ州で最高裁が、中絶の是非を問う住民投票を11月に実施することを認めた。同州では妊娠6週以降の中絶が5月1日から禁止となるが、これが覆され、幅広い中絶アクセスが州憲法に明記される可能性がある。

(英語記事 Arizona Supreme Court reinstates near-total abortion ban from 1864

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c296g8y8050o


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