2024年4月30日(火)

BBC News

2024年4月15日

イスラエルは、自分たちに数百ものドローン(無人機)やミサイルによる攻撃を行ったイランについて、対応を検討している。中道派のベニー・ガンツ前国防相は14日、しかるべき時が来たらイランに「代償を強いる」と述べた。他方、イスラエルの同盟国アメリカの政府筋によると、中東地域での敵対行為の激化を避けるため、イランに対するイスラエルの反撃に、アメリカは参加しないと伝えたという。

ガンツ氏ら5人からなるイスラエルの戦時内閣は14日、今後考え得るイランへの対応について協議したが、そのタイミングや規模をめぐり意見が分かれ、決定は出なかったと、ロイター通信は報じた。

アメリカのジョー・バイデン大統領はイスラエル時間14日未明(米東部時間13日夜)、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と電話会談し、同国はイスラエルのイランに対するいかなる報復攻撃にも参加するつもりはないと警告した。米政府高官が明らかにした。

バイデン氏はイスラエルに対し、「慎重に」対応を検討するよう促したという。

イランは現地時間14日未明、イスラエルに向けてドローンやミサイルを発射した。シリア・ダマスカスのイラン公館が4月1日に攻撃されたことへの反撃が、近く起きると予想されていた。

イスラエルとその同盟国は14日未明、イランからイスラエルに向かうドローンやミサイルのほぼすべてを撃墜した

イスラエル国防軍(IDF)のダニエル・ハガリ報道官によると、イランが発射した約300の爆発物を搭載したドローンや巡航ミサイル、弾道ミサイルの99%をイスラエルが迎撃した。

エルサレムでは午前1時45分ごろに空襲警報が鳴り響いたが、結果的に、攻撃の影響は限定的なものにとどまった。IDFによると、南部の軍事基地が軽微な損傷を受け、7歳のイスラエル人少女が防衛網を突破したミサイルで重傷を負ったという。

イランが自国内からイスラエルを直接攻撃したのは初めてで、中東全域を巻き込む地域戦争に拡大させないよう自制を求める声が高まっている。

イランの意向は

イラン軍全体のトップ、モハマド・バゲリ参謀総長は、イスラエルに報復すると警告。イラン側の対応は「(14日の)軍事行動をはるかに超える規模」になるだろうとした。このような好戦的な発言の一方で、イラン当局は敵対行為がエスカレートすることには関心がないと示唆している。

イランの国連代表部は「X」で14日、イスラエルへの攻撃について、自衛権を規定した国連憲章第51条に基づいたものだと説明。今月1日の在シリア・大使館攻撃について、「イランの軍事行動は、シオニズム政権がダマスカスで我々の外交施設を侵略したことへの反応だった。この件はこれで決着したとみなすことができる」と述べた。

そのうえで同代表部は、「仮にイスラエルの政権がまた過ちを犯すならば、イランの反応は今回よりもはるかに厳しいものになる。これはイランと、ならずもののイスラエル政権との紛争であって、アメリカは近寄ってはならない!」と強調した。

イスラエルは攻撃を受けた14日のうちに、平常を取り戻しつつあるようだった。空域は再開され、空港が再び使えるようになった。

アメリカ、対イラン報復には「参加しない」

米政府高官は14日、バイデン氏とネタニヤフ氏の電話会談について記者団に説明。イランがイスラエルを初めて直接攻撃するという前代未聞の行為に対し、IDFがどのように対応するのか、「非常に慎重に、戦略的に考える」ようバイデン氏はネタニヤフ氏に伝えたのだという。

バイデン氏とネタニヤフ氏の電話会談は、約100発の弾道ミサイルがイスラエルに向けて同時に飛来した直後の、「感情が高ぶっていた」タイミングで行われた。

両首脳は「どのように物事を減速させ、物事をじっくり考えるかについて」話し合った。バイデン氏は、イスラエルがイランとの応酬で「最善を尽くした」と強調したという。

一方でホワイトハウスが、イランに対して重大な対応を取らないようイスラエルに警告したかどうかについては、政府高官は明言を避け、「それはイスラエルが計算しなければならないことだ」とだけ述べた。

米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は、同国はイスラエルに対し、紛争拡大を回避する道を模索していることを明確にしたと、繰り返した。

これと同じメッセ―ジが外交ルートを通じてイランにも送られていると、政府高官は述べた。

カービー氏も政府高官も、アメリカはイスラエルを守り続けるが、イスラエルの(報復)対応に参加することはないとしている。

米政府の姿勢に批判

こうした政府の姿勢に、一部の米議員や元政府高官から批判の声が上がっている。

下院情報委員会のマイク・ターナー委員長(共和党)は、紛争のエスカレーション緩和についてのカービー氏の発言は「間違っている」と指摘。

「(紛争はすでにエスカレートしている。政権はそれに対応する必要がある)と米NBCで述べた。

ドナルド・トランプ政権で国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏は、イスラエルがイランの核開発計画を標的とした報復攻撃を選択した場合、アメリカはイスラエル側に加わるべきだと述べた。

「イスラエルはイランの核開発計画を、完全ではないにしても相当の部分を破壊あるいは無効化できると思う」と、米ニュースネイションに語った。「率直に言って、イランの核開発計画をイスラエルが何とかしようと思うなら、アメリカは堂々とイスラエルを応援すべきだ」。

イランのイスラエル攻撃を受けて、マイク・ジョンソン下院議長(共和党)は、対イスラエル軍事支援法案の可決を「再び目指す」と述べた。

支援法案をめぐっては、民主党から台湾やウクライナへの支援も含めるべきだとの声が上がり、審議が行き詰っていた。

元米国防次官補代理(中東担当)のミック・マルロイ氏は、対イスラエル支援法案は「遅延なく」可決されるべきだとBBCに述べた。

「アメリカの安全保障支援がなければ、我々は大規模な地域紛争に直面していたかもしれない」とマルロイ氏は述べた。「(対イスラエルの)追加支援と、ウクライナや台湾への支援は、我々の国家安全保障を利するものだ。これは慈善事業ではなく、アメリカの国防の一環だ」。

(英語記事 Israel says it will respond to Iran attack 'when time is right'US tells Israel it won't join any retaliatory strikes on Iran

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0kln92w02vo


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