2024年5月4日(土)

BBC News

2024年4月23日

イギリス議会は22日深夜、小型ボートなどで英仏海峡を渡ってイギリスに不法入国した亡命希望者らをアフリカ・ルワンダに移送する計画を遂行するための法案を可決した。

この法案は、ルワンダが亡命希望者にとって安全な国だとイギリスの法律で明示することで、リシ・スーナク首相の主要政策の一つである移送計画を可能にする。今年1月に下院で可決されたものの、野党や上院から激しい反対にあい、5カ月間にわたって議論が繰り返されていた。

法案は数日以内に、チャールズ国王による「国王裁可」を経て、正式な法律となる見通し。

スーナク首相は、ルワンダへの最初の移送便は10〜12週間以内に出発する予定だと述べた。

しかし、移送をめぐる裁判や亡命希望者が乗る飛行機の確保の遅れにより、出発が延期される可能性もある。

ルワンダ移送計画のこれまで

不法入国者をルワンダへ移送する計画は、2022年4月にボリス・ジョンソン首相(当時)が最初に発表。以来、法的な異議申し立てに直面してきた。

昨年6月には欧州人権裁判所(ECtHR)の差し止め判断を受け、移送の第1便が出発直前にキャンセルされた。英最高裁も11月、この政策がルワンダに移送される人々の人権を侵害するとした控訴院の判決を支持し、違法と判断した。

スーナク政権は最高裁の判断を受け、ルワンダが亡命希望者にとって安全な国だと、イギリスの法律で明示する緊急法案を策定。裁判所に人権法の主要部分の適用除外を命じることで、最高裁判断の適用を回避するものとなっている。

スーナク首相はこの日、法案が可決され次第、飛行機が離陸する予定であり、500人のスタッフが移民を「一路、ルワンダまで」移送する準備ができていると述べた。

「計画は整っている。そして、移送便は何があろうとも出発する」とスーナク氏は語り、「月に何便ものフライトを送り出したい。(中略)そうすることで、組織的な抑止力を構築し、ボートを止めることができるからだ」と付け加えた。

スーナク氏はまた、法案を可決し、移送を開始するため、必要であれば議員に夜通し働いてもらうと宣言した。

22日の審議は深夜までもつれこんだ。上院は5回にわたって法案を差し戻したが、下院は上院の修正案を相次いで拒否。最終的には、上院が「選挙で選ばれた下院の優位を尊重する」として修正案を取り下げ、法案は可決された。

最大野党・労働党のイヴェット・クーパー影の内務省は、ルワンダ移送計画を「法外に高価な仕掛け」と呼んで批判した。

英内務省が昨年6月に出した試算によると、不法移民をルワンダなどの「安全国」に移送する計画は、移民をイギリスに滞在させるよりも1人あたり6万3000ポンドほど高くつく。

また、上院のブラウン卿(労働党)は、イギリス軍に協力したアフガニスタン人退役軍人について、移送の対象から除外するべきだと主張していた。

政府のルワンダ移送計画に反対しているのは、野党だけではない。人権擁護団体からは、この計画が、国家による権力乱用から人々を守るものを弱体化させることで「法の支配に対する重大な脅威」をもたらすとの指摘が出ている。

何度も挫折を味わったスーナク首相にとって、法案の可決は政治的勝利となった。

しかし、海峡を渡る小型ボートを止めるという公約は今や、それが抑止力になるかどうかにかかっている。総選挙が間近に迫っている今、首相がこの計画がうまくいくと証明する時間はそう長くはない。

(英語記事 Rwanda bill to become law after months of wrangling

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cv2jnw4z7r8o


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