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2013年12月19日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、東京証券部、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務める。11年からフリーに。熊本学園大学招聘教授。近著に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)。

安倍政権の雇用改革案が「解雇特区」の反発を受けて、見送りになった。しかし、働き方の多様化で、非正規雇用を望む人は増えている。現行の労働基準法では、5年満期で「雇い止め」が日常茶飯事だ。雇用・解雇ルールの明確化で、働きやすい環境を作り出せ。

 「解雇特区を許すな」。9月末から10月にかけて、野党や左派系メディアが色めきたった。安倍晋三首相が規制改革の突破口と位置づける「国家戦略特区」で、企業が従業員を解雇しやすくする規制緩和を導入しようとしている、という話が急浮上したからだ。

2014年卒業予定の大学生らを対象にした企業説明会(12年12月)。雇用の明確化が彼らを救う? (提供:時事通信フォト)

 現実に議論されていた内容は大きく違ったのだが、燎原の火のごとく批判の声は広がっていった。特区の原案づくりを担っていた「国家戦略特区ワーキンググループ(WG)」は座長の八田達夫・大阪大学招聘教授ら民間有識者5人からなる作業チームで、自治体や企業からの提案を基に規制改革案を練っていた。WGがいくら「解雇を自由にすることなど考えておらず事実無根」と否定しても収まらない。「解雇特区」という言葉がひとり歩きしていった。

 「われわれの狙いは雇用ルールを、企業と被雇用者間の契約で明確化しようというところにあった」とWGのメンバーのひとりは振り返る。

 例えば日本では、企業が従業員を解雇する場合のルールが明確ではない。判例の積み上げで「整理解雇の四要件」と呼ばれるものが存在するが、その要件は非常に厳しい。高度の経営危機に直面するなど人員整理の必要性があることが前提で、新規採用の抑制や希望退職の募集といった整理解雇を回避する努力を履行、合理的な人選基準で解雇する人を選び、説明や協議などの手続きが妥当とされる必要がある。

 会社がこの四要件を満たしたと判断しても、解雇された従業員が訴えるケースが少なくない。裁判になれば時間も費用もかかるうえ、裁判所の判断もどうなるか分からない。大企業では事実上、解雇ができない、と言われているのはこのためだ。

 日本に進出しようとする外国企業から見れば、こうした日本での雇用は「不確実なリスク」と映る。「解雇の条件」などを事前に契約で決めておく欧米流を求める声が出て来るのはそうした背景があった。

 WGでは雇用や解雇の条件を盛り込む契約を特区に限って可能にしようということが議論された。特区に進出する外国企業、グローバル企業やベンチャー企業だけを対象にしようと検討されていたのだ。

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