解雇の自由は正しいが不平等である


原田 泰 (はらだ・ゆたか)  早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

経済の常識 VS 政策の非常識

なぜ根拠に基づかない政策がまかり通り、本質的な問いが発せられないのか。少子高齢化、経済政策、財政赤字など、日本の戦後モデルに歪が生じているにも関わらず、政治はポピュリズムに陥り、50年、100年先の日本に責任を持てる判断を下していない。根拠・経済原則に基づく合理性という観点から、不合理な政策の問題点を指摘する。

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仕事があるのは大事なことだ。仕事は、単にお金を稼げるというだけでなく、その仕事を通じて社会から認められるという感覚が得られる。だから、仕事はできるだけ多くあった方がよく、個人としては、できるだけ充実感が得られ、給与が高く、きつくなく、首にならない仕事があった方が良い。しかし、そううまくはいかない。そこで、まあまあの待遇とそう簡単には首にならない仕事を増やしたいと誰もが考える。正社員であれば、年金・健保・失業保険にも入っているし、首にするのは難しい。だから、すべての労働者を正社員にしようと考えるのも分かる。

 民主党政権下では、この方針が採られた。しかし、企業に、すべての労働者を無理やり正社員で雇えと言っても無理である。例えば、10年先の仕事のことまでは予想できるとしよう。そのために人手がいれば人を雇う。しかし、一度雇った人を定年まで40年間雇わなければならないとすれば、残りの30年間はその人のための仕事がなく、賃金が無駄になる。となれば、企業は極力人を雇わないようになる。規制によって雇用を保障すれば、今雇われている人の雇用を守れても、新たな雇用が失われることになる。リーマンショック後のスペインで、若者の失業率が55%になるのは、このことの結果だ。

 自民党は逆転の発想を考えている。産業競争力会議では、民間議員は、解雇自由の原則の確立と「準正社員」の制度を求めているようだ(産経新聞2013年3月15日など)。民法では、解雇自由の原則が採られているが、労働契約法(労契法)では、解雇に客観的に合理的な理由を求めている。これを、民法と同じく、労契法にも解雇自由の原則を明記すべきだというのである。もう一つは、職種や勤務地を限定した準正社員の制度だ。準正社員は、ある時点で必要だった職種や特定地域の労働者が不要になれば、解雇できるというものだ。

 企業が労働者を解雇しやすくできれば、企業は気楽に人を雇うから、かえって雇用は拡大すると、これらの改革案を唱える人々は主張する。さらに、人々がより自由に企業を移動するから、成長産業への労働移動が進み、産業構造の転換も早くなるという。

解雇を自由化すれば雇用は増える

 私は、この逆転の発想は正しいと思う。あらゆる労働者を保険制度に加入させた上で、この発想に賛成だ。短時間労働者も、労働時間によって負担を変えることにすれば、全員の保険加入が可能になる。

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「経済の常識 VS 政策の非常識」

著者

原田 泰(はらだ・ゆたか)

早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

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