経済の常識 VS 政策の非常識

2013年3月6日

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 アベノミクスが効いている。安倍晋三首相が、大胆な金融緩和に言及しただけで、為替が下落し、株価が上がった。新しい日銀総裁・副総裁が金融緩和論者になることもほぼ確定的となったことも好影響を与えている。

 これまで金融緩和しても、すでにマネーはじゃぶじゃぶであり、銀行貸出を増やすことはないから景気は良くならないという説が流布されていたが、私は従来から次のようなサイクルを主張してきた。

 為替が下がればやがて輸出が増え、輸出企業の利益と雇用が拡大する。利益が拡大すれば、株価が上がり、投資も増える。雇用が増えれば給与総額が増えて消費が増える。投資と消費が増えれば、やがて物価も上がる。

 現時点では為替下落と株価上昇までは来た。あとは、これが企業の投資や雇用の増加につながるかどうかである。

 政治家もそこが気になっているのか、企業の経営問題について発言することが多くなっている。安倍首相は、2月5日の経済財政諮問会議において、「業績が改善している企業には、賃金の引き上げを通じて所得の増加につながるよう協力をお願いしていく」と述べ、産業界に賃金上昇に向けた取り組みを要請する考えを示した(共同通信2月5日)。

 麻生太郎財務相も、2月12日の閣議後の記者会見で、ローソンがアベノミクスに賛同して給料を3%アップするということに対して、「1社でもこういった傾向が出てくるのはいい傾向。大して金利もつかない内部留保が、賃金、配当、設備投資にまわらずじーっとしているという意味が分からない」と発言した(日本経済新聞2月8日)。

 しかし、賃金を決めるのも、内部留保をどう使うかも企業の経営判断の問題である。

 これまで、世界需要の急減、急激な円高、海外勢との厳しい競争、海外企業の買収の難しさなど多くの困難を経験してきた企業にとってみれば、一度賃金を上げれば下げるのは難しいから、慎重になるのは当然である。内部留保をため込むのは、急激な市況悪化への備え、設備投資や海外企業買収の機会を見計らっているからだ。政治家が、外からどうこう言う話ではないだろう。

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