チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年2月18日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

逼迫する水量に、汚染が深刻化する河川や地下水。北京をはじめ中国全土の水資源データが示す衝撃の事実。

 「世界中にあふれる水不足の報道をすべて合わせても、北京がいま直面する水不足の危機的状況には及ばない」

 2013年10月、こう発言して注目を集めたのは中国水科院水資源所の王浩所長である。この発言は決して誇張ではない。

 国連環境計画(UNEP)の基準では、1人あたりの年間水資源量に準じて1700立方メートルを下回る水準を「水不足懸念」、1000立方メートルを下回る水準を「水不足」、そして500立方メートルを下回る場合には「絶対的水不足」として分類している。中国では天津市、北京市、寧夏回族自治区、上海市、河北省、山西省、山東省、江蘇省の8省市自治区が「絶対的水不足」に含まれ、なかでも北京市は、500立方メートルどころか、100立方メートルにさえ満たないのが現実なのだ。

 「12年を例にとれば、北京で消費される水の総量は年間約36億立方メートルです。このうち約7億5000万立方メートルの水(約20.8%)が、実は再生水によってまかなわれているというのが現実です。専門家によれば、少なく見積もっても毎年約15億立方メートルの水が欠乏していることになるというのですから深刻です」(北京のメディア関係者)

 観光で北京を訪れ、ホテルで蛇口をひねれば水は勢いよく流れ出すので、外国人が水不足を実感することはない。同様に北京で暮らす人々が日々の生活のなかで水不足を実感する機会は決して多くはない。

慢性的な水不足に直面する北京

 それゆえに北京市民の水消費量は増える一方だ。北京市自来水集団の梁麗スポークスマンが公表した数字に従えば、13年7月31日、北京での水の供給量がそれまでの史上最高を更新し294万立方メートルに達したのに続いて、8月26日にはさらに298万立方メートルに達して記録を更新し続けている。北京市民の危機意識の欠乏ぶりには驚かされるばかりだ。

 だが、この裏側には、中央政府が躍起になり「綱渡り」とも表現される強引な引水によって各地から水をかき集めてきている実態がある。

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