中国国防大学の鍋中安教授(上級大佐)が、12月6日付新華網で、11月の航空母艦「遼寧」の南シナ海への航行は、戦略上の一つの大きな突破口であったとしつつ、同時に「遼寧」の運用には5つの弱点が存在する、と述べています。
すなわち、中国の航空母艦「遼寧」が11月26日、青島港を出て、南シナ海に入った。その時、空母を中心にミサイル駆逐艦やミサイル護衛艦などを含む戦闘群が南シナ海に入ったが、このような編隊が南シナ海に入ったのは初めてのことであり、南シナ海での防衛に一大突破口を開いた。
それまで「遼寧」は青島を拠点に北方海域でのみ訓練を行っていたが、南シナ海において各種装備の実験、艦載機の離着陸、訓練などを行った。南シナ海の深海は中国海軍にとって、将来、主要活動海域となろう。
「遼寧」が黄海から南シナ海に入るにあたり、最も便利な航路は二つある。一つは黄海から東海(東シナ海)に入り、台湾海峡を通って南シナ海に入るという経路であり、二つ目は黄海から東海に入り、宮古海峡と与那国島付近の海域を通過し、台湾とフィリピンの間のバシー海峡を経て南シナ海に入る経路である。今回は第一の経路を通った。
この経路を通ったことは、防衛識別圏設定が引き起こした緊張した局面を避けることとなり、さらには、事前に南シナ海に入ることを公表することで周辺の国々の疑念を低めることともなった。
空母からの艦載機である「殲-15」戦闘機は半径800キロから900キロであり、中国海軍の軍事行動の範囲を飛躍的に拡大することとなる。この戦闘機の能力はスカボロー礁をカバーするのみならず、南沙群島やマニラまでも含むこととなる。
他方、今回「遼寧」と編隊を組んだ二隻の駆逐艦と二隻の護衛艦の戦闘群を米国の空母戦闘群と比べると、空母の数、空母の総合的作戦能力において大きな差があることは良く認識されねばならない。「遼寧」には次の五つの大きな弱点がある。
1)「遼寧」の核心の装備はロシアの技術を多く使っており、航続能力に限界がある。遠洋作戦能力は不足している。
2) 米国の空母はすでに200キロから300キロを飛行出来る無人作戦航空機を有しているが、「遼寧」はまだまだこのレベルにはいたっていない。
3) 艦載装備の面では、中国の戦闘機は電子系統の面で米国のF/A-18E/Fに比べてはるかに劣っている。「殲-15」は二つの対艦ミサイル弾道弾をもっているが、F-18は4つ持っている。