世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月31日

»著者プロフィール

 米戦略国際問題研究所シニアアソシエイトのルトワックが、12月29日付ウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説で、中国の軍事的冒険主義について、2008年に鄧小平の「平和的台頭」路線を放棄したと分析し、1914年以前のドイツ帝国を想起させる、と述べています。

 すなわち、12月5日に、中国海軍の艦船が、米海軍の巡洋艦を公海上でブロックしようと企てる事件があった。この件は、なぜ中国の司令官は、米国の軍艦と衝突しかねない事態を引き起こすことを良い考えと思ったのか、という重要な疑問を提起している。

 ニアミスの増大は、挑発的に行動することにたとえ致命的な事故のリスクがあるとしても、中国海軍の将校にとって、キャリア上の誘因があることを示唆している。陸軍でも同様である。蘭州軍区の軍隊は、4月に、インドが支配していたLadakhを奪取することが賢明なことであると考えた。同様に、海警は、日本が実効支配している尖閣の周囲をパトロールし、最近は、日本の領海に侵入している。

 冷戦時は異なっていた。米ソの航空機と軍艦は、数えきれないほど遭遇したが、危険な事態はほとんどなかった。ソ連の将校は、「冒険主義」がキャリアを終わらせかねない罪であることを知っていた。

 しかし、中国の場合、共産党の指導者は、冒険主義を奨励しているように見える。国営のメディアは、軍事的冒険主義に基づいた行動を盛んに支持している。エスカレーションのリスクは極めて大きいのに、なぜであろうか。

 2008年以来、中国指導部は、1978年に鄧小平が打ち上げた「平和的台頭」政策を放棄している、と結論付けざるを得ない。誰にも脅威を与えず、突出した主張をせず、台湾を攻撃しない、という鄧小平の政策は、輝かしい成功を収めていた。米国は、中国の経済成長を歓迎し、他の国もそれに倣っていた。

 全ては、2008年以後変化した。世界金融危機を米国のパワーの崩壊の先駆けと解釈し、北京は、長らく封印してきたインドのArunachal Pradesh 州への主権主張を突如復活させ、日本の政治家からの友好的な姿勢をはねつけ、尖閣への主権を主張し、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムのEEZを含む、南シナ海の大部分に対する領有権を宣言した。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る