米AEIのゲイリー・シュミットが、中国が防空識別圏の設定という強硬姿勢をとったのは、米国が弱まっていると判断したのに加え、地域で支配的地位を得たいという野心のためである、と1月10日付ロサンゼルス・タイムズ紙掲載の論説で述べています。
すなわち、中国は国内の諸問題に対処するためにも、経済成長を持続させるためにも、国際秩序の安定を必要としているはずなのに、なぜ周辺国や米国が否定的反応を示すのを知りつつ、防空識別圏を設定したのだろうか。
鄧小平は「韜光養晦」と言ったが、中国はなぜ今強硬姿勢をとるのだろうか。中国専門家は、軍が要因であるという。中国の文民指導者は軍の支持を得るため、軍により自由裁量の余地を与えるというのである。
しかしこの議論を支持する確固たる証拠はない。軍を共産党の指導下に置くというのが中国共産党の鉄則であり、習近平も軍と治安問題をしっかり掌握している。
中国の最近の強硬姿勢を米国の弱さと結び付ける議論もある。不況のさなかの2009年にオバマ政権が中国に戦略的な手を差し伸べたことを、中国は米国の後退のしるしと見た。米国の政府高官がG2の可能性に言及し、オバマが「米中関係が21世紀を形作る」と述べたことなどから、中国が、米国の衰退が早く、中国のトップへの台頭が予想より早いと考えた可能性がある。米国の「アジアへの軸足移動」が国防費の削減で弱められ、TPPの早期発足が危ぶまれるに至って、このような見方はさらに強まった。
しかし米国の弱さが重要な理由であるとはいえ、それがすべてではない。そのほかに中国の野心がある。中国の指導者は、中国が大国となり、かつての帝国の時代のように、地域で支配的な影響力を持ちたいと考えている。習近平は「中国の夢」を語った。中国から見れば米国は地域の侵入者であり、地域で支配的地位を得るための主要な障害である。経済や貿易の結びつきがたとえ大きくても、国家も個人同様、邪魔するものに憤りを感じるものである。