オバマ大統領は1月17日に演説を行い、国民の安全を守るために人知れず働いているとして国家安全保障局(NSA)を擁護すると共に、情報収集やデータの蓄積保管の方法を変えると発表しましたが、これが実行されれば、米国の諜報活動に関する法律制定の動きとしてウォーターゲート事件以来最大のものになるだろう、とエコノミスト誌1月18-24日号が報じています。
すなわち、スノーデン事件を契機に、オバマ大統領は、NSAの行為を正当化すると共に米国のスパイ活動について新たな方向性を打ち出さねばならない難しい立場に立たされることになったが、今回の演説を見る限り、オバマはこのきわどい綱渡りに何とか成功したようである。
オバマは、(1)友好国や同盟国については、説得力ある根拠がある場合にのみスパイ活動を行う、(2)国家安全保障通達(FBIなどが国家安全保障関連の情報の提出を求めて発行する書状。これにより一般米国市民の私的通信やインターネット活動にアクセスできるようになる)にはより厳しい法的条件を課す、(3)米国内における米国民による全ての電話通話に関するメタデータの政府による保管を止める方針を打ち出した。
これらの変更は、大統領権限で行えるものもあるが、議会の承認が必要なものもある。選挙の年にNSAの活動に関して法律制定を目指すのは政治的にかなりの冒険だが、オバマ政権は敢えて賭けに出ることにしたようである。
もっとも提案の一部は詳細を欠いたままである。とりわけ、電話に関するメタデータの保管を止めながら、どうやって必要な場合に政府がメタデータにアクセスできるようにするのかが触れられていない。ただ、打ち出された原則ははっきりしており、米国は、安全保障のために自由の侵害は無視しても構わないという姿勢から遠のいたと言える。
そして、メタデータについては、オバマは9.11テロの共謀者がサンディエゴからイエメンにかけた電話の例を挙げ、当時、NSAがこの電話が米国内からのものだと知っていれば、テロは防げたかもしれないと述べて、政府のメタデータへのアクセスの必要性を強調している。
今後、オバマに対しては、従来のやり方に微調整を加えただけなのに、市民的自由に配慮したと吹聴しているとの批判が必ずあるだろう。しかし、オバマの提案した変更は、実際に実行されれば重要な意味を持つものであり、こうした批判はあたらない。