喧嘩の作法

2014年3月20日

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久慈直登 (くじなおと)

日本知的財産協会専務理事

1952年岩手県久慈市生まれ。日本知的財産協会専務理事。本田技研工業株式会社知的財産部長を経て2012年より現職。主要論文としては国連世界知的所有権機構による世界への環境技術普及のための「WIPO Green」として採用された「プロバゲイティング グリーンテクノロジー」など。

 より上手く知財を使うためには、知財訴訟の実態を知っておかなければいけない。裁判官による判決までたどりついて白黒の決着がつくのは、国や年度によって違う数字にはなるが、多くの国で訴訟の30%程度であり、それ以外は途中の段階で和解や取り下げになっている。大多数の訴訟は判決がでず、結果が公開されないためどちらが勝ったのか、外部からは判らない。和解する理由は当事者毎にあるものの、各国毎の事情というのもありそうである。

和解率高い米中の訴訟

 中国の裁判所は訴訟件数があまりにも多すぎてやっていられないと思うらしく、社会の安定の障害にならない案件は当事者に無理やり圧力をかけて和解させているようである。一般に中国人たちは自分の行動について言い訳をすることが大好きだが、「自分は和解したくないが、裁判所からいわれたのでやむなく和解した」といいやすいことも圧力を受け入れるベースとしてある。こうした理由で中国の知財訴訟の和解率は70%を超える。

米中の訴訟は和解率が高く、iPadの商標権を巡ってアップルと中国企業が争った一件も和解で幕を閉じた(提供:Imaginechina/アフロ)

 しかし権力による圧力は外国企業には通用しないため、外国企業との訴訟では和解率がぐっと低くなる。これらは中国企業との交渉の参考になる。つまり侵害を見つけたらまず訴訟を起こし、次に行政や裁判所を味方につけるため広報活動も含めてきちんと説明し、彼らの圧力を利用するという手が使えそうということである。相手が言い訳しやすい逃げ道を用意しておいてやることも、訴訟途中での和解を有利にする手法である。

 アメリカの知財訴訟の和解率は中国よりもっと高い。判決までいかずに当事者同士で和解するのは90%になる。訴訟を仕掛けておいて何故途中で和解をするのか。アメリカでの理由は、訴訟手続きの初期段階でディスカバリという証拠開示のシステムがあることが大きい。ディスカバリは、お互いに所有する証拠を見せ合うもので、相手の証拠が分かれば当事者で落とし所が分かり答えをだせる。

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