企業はさまざまである。知財の使い方は業種によって全く違っており、同じ業種でも技術をもって勝負する企業なのか、営業に強みをもつ企業なのかによって知財の重みが違う。さらにトップに位置して万遍なく事業を守ろうとするのか、それともチャレンジャーとして特徴的な強い技術を志向するのかによっても知財の使い方が違う。
業種による知財の違いというのは医薬品のようにわずか数件の特許で世界制覇をする業種もある一方で電機製品のように数千件の特許をもっていても1つの製品を守りきれない業種もあり、ビジネスの特徴にしたがって知財も変化する。さらに同じ業種の中でもアップルのように常に新しい製品で知財を活用しようとする企業もあれば、その製品を真似るため知財の抜け道を探すことを得意とする企業もある。
どういう業種の企業であっても経営者にとって知財の使い方を理解することは重要である。企業競争での広告宣伝や価格はライバルとの比較で優位性を印象づける間接的な手段であるが、知財だけは直接相手の差止めができる唯一の手段である。とはいえ経営者は個々の特許権の登録手続きの詳細などは知る必要がない。それは手続きを担当する専門家にまかせればいい。知っておく必要があるのはそれぞれのビジネスにおいて知財の効果的な使い方はどのようなものかということである。
使い方の例として、今川義元の軍勢に対して織田信長の部隊は少数で戦って勝利をおさめたが、これを今川軍の本陣だけでみると圧倒的に織田軍の人数の方が多い。特定の重要な領域における戦力の集中投入は勝つための鉄則である。知財の使い方も同じで、これぞという領域に知財を集中投入し、実際に権利を行使して威力を示すことが効果的な使い方の一つである。この使い方で勝利を得たビジネスの例は世界に多い。