2024年4月20日(土)

田部康喜のTV読本

2014年3月5日

 東日本大震災の3.11から間もなく3周年を迎える。これまでの歳月は震災前よりも長く感じるのは私だけだろうか。あの日を境として、震災後社会は政治、経済、社会、文化あらゆる分野で、それ以前のあり様を考え直している。

「東京家族」と響き合う作品

 テレビ朝日開局55周年記念ドラマ「時は立ちどまらない」(2月22日)を観た。岩手県の三陸沿岸の仮名の市が舞台である。地震と津波に襲われたふたつの家族が織りなすドラマは、フィクションだからこそ描ける、震災地に生き残った人々の感情をていねいに描いている。

 日本のドラマ史に残る数々の名作をてがけた、山田太一の脚本である。

 2013年初めに封切られた、監督・山田洋次の「東京家族」と響き合う。この作品は名匠・小津安二郎に捧げるオマージュとして、震災前に企画されて脚本が仕上がった段階で、震災に遭遇して、山田監督は書き直した。

 主人公の末息子の青年と婚約者が出会ったのは、震災地のボランティア活動の場であった。そして、小津の名作「東京物語」の重要なストーリーを取り入れて、青年の老母は瀬戸内の島から夫ともにこどもたちが住む東京に旅にきて、急死する。

 青年と婚約者がふたりで震災後の社会を、希望をもって生きていこうとする、ラストシーンが美しい。

ふたつの家族を襲った震災

 「東京家族」で夫婦役を演じた、橋爪功と吉行和子が「時は立ちどまらない」では、ふたつの家族のそれぞれの祖父・浜口吉也と、祖母・西郷奈美に分かれて、物語のなかで微妙な感情を交錯させる。

 地元の信用金庫の支店長を務める西郷良介(中井貴一)が主人の西郷家と、漁師の浜口克己(柳葉敏郎)が主人の浜口家である。

 ドラマの冒頭は、西郷の長女で市役所に勤務しながらいずれは政治家を目指している、千晶(黒木メイサ)と、浜口家の長男で漁師の修一(渡辺大)が結婚を前提として、両家の顔合わせのシーンから始まる。


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