公共事業が持つ景気抑制効果
第2の矢の再考を


原田 泰 (はらだ・ゆたか)  早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

経済の常識 VS 政策の非常識

なぜ根拠に基づかない政策がまかり通り、本質的な問いが発せられないのか。少子高齢化、経済政策、財政赤字など、日本の戦後モデルに歪が生じているにも関わらず、政治はポピュリズムに陥り、50年、100年先の日本に責任を持てる判断を下していない。根拠・経済原則に基づく合理性という観点から、不合理な政策の問題点を指摘する。

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デフレ脱却と財政再建には細い道しかないという議論がある。デフレから脱却するには財政・金融の両面から景気を刺激する必要がある。しかし、財政で景気を刺激すると財政赤字が膨らみ、財政再建は遠のいてしまう。だが、財政再建のために財政を絞れば、今度は景気が失速し、デフレ脱却が不可能になってしまう。だから、デフレ脱却と財政再建の間には細い道しかないというのである。

 しかし、財政・金融両面から景気を刺激しようとするからいけないのであって、財政は何もせず、金融だけで景気を刺激すれば良い。そう言うと、金融政策の景気刺激効果は小さいから、あるいは効果がないから、財政・金融両面からの政策が必要なのだという答えが返ってくるだろう。そのために、アベノミクスでも第1の矢の金融緩和と第2の矢の財政出動があるというのである。しかし、本当にそうなのか。

 図1は、小泉政権・第1次安倍政権下でのマネタリーベース(季節調整値)、GDP、政府最終消費支出、公的固定資本形成(公共投資)、民間企業設備投資、輸出(いずれも実質の季節調整値)を示したものである。

 図を見ると、マネタリーベースが拡大、すなわち2001年3月からの量的緩和の実施とともに実質GDPが増大している。GDPの内訳を見ると、公共投資が減少しているのが特徴的である。政府最終消費支出は横ばいだから、両者を合わせても政府支出は減少していた。すなわち、財政政策は発動されるどころか、抑制されていた。その中でGDPが伸びていたのである。

 なぜGDPが伸びていたか。輸出、設備投資が伸びていたからだ。なぜ輸出が伸びていたか。この期間、円が110円から120円くらいで安定していたからである。円が安定していたのは量的緩和のおかげでもある。輸出が伸びていたので生産設備を拡大する必要があり、設備投資も伸びていた。

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「経済の常識 VS 政策の非常識」

著者

原田 泰(はらだ・ゆたか)

早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

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