ウクライナ混乱に中国は高みの見物

軍事技術は吸収し尽くし、兵器開発への影響は限定的


弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)  早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

中国メディアは何を報じているか

(写真:アフロ)

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ウクライナで発生した政変の背景にはロシア寄りかEU寄りかという路線の対立があったが、中国の存在も見逃すわけにはいかない。昨年12月にヤヌコビッチ大統領(当時)はデモのさなか中国を訪問して80億ドル分の投資を取り付け、中国側は核兵器を放棄したウクライナ側に安全保障も提供すると確約した矢先である。当時既に騒乱状態になりつつあったとはいえ、3カ月も経ずに政権が崩壊すると誰が想像できただろうか。

ウクライナなしではありえなかった
国防技術の発展

 ウクライナの政変について中国国内ではそれほど大きな関心がもたれているようには見えない。もちろん日本でも同様だが、日本と異なる面を探せば、それはウクライナとの関係では軍需産業面についての報道がやはり突出して多いことである。それは中国とウクライナ間で兵器開発において密接な関係が続いてきたからに他ならない。

 ウクライナは旧ソ連時代から航空宇宙産業の面で世界に冠たるハイテク技術を持っている。中国との軍需産業分野の協力については昨年盛んに試験航海を行った空母「遼寧」がウクライナから購入した「ワリヤーグ」を改造したものであったことは記憶に新しいだろう。

 中国ではここのところ軍備拡張が急速に進み、中でも兵器装備が拡充されている。こうした陰にはロシアやウクライナとの兵器売買や技術協力があったのだ。中国の国防技術の発展にはウクライナなしではありえなかったという論評もある。

 とはいえ今回の騒乱に対して中国は現在、高みの見物を決めこんでいる。そうした様子を窺わせる記事を二つ紹介したい。『環球時報』ネット版に掲載されたウクライナの混乱を中国がどう考えているかが窺える「ウクライナの政変は中国の軍需産業に脅威となるか」という記事。そしてもう一つは中国とウクライナの軍需産業における協力関係の変遷を解説する「ウクライナがなければ現在の中国国防の成果はなかったと論評」という記事である。

* * *

記事(1)【2014年2月24 日 環球網(抄訳)】

 ウクライナの情勢は2日の間に大きな転換が起きた。ヤヌコビッチ大統領が解任され、反対派は勝利に歓喜し、政権掌握に動いている。

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「中国メディアは何を報じているか」

著者

弓野正宏(ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

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