安保激変

2014年3月18日

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辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター主任研究員

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

 3月4日に米国防総省は4年毎の国防政策見直し(QDR)を発表した。今回のQDRは、基本的には、イラク・アフガニスタンでの戦闘が終了し、米軍の態勢が「平時」に戻りつつある時期のものであるとはいえ、厳しい財政状況が続く中で米国の国防戦略が手詰まり感に陥っていることが鮮明になったQDRでもあった。

予算の制約への警鐘が突出

 そもそも、QDRは1990年に、当時の米軍統合参謀本部議長が、冷戦後、国防体制の基本を再検討するための「ベース・スタディ」と、その後、第1期クリントン政権でレス・アスピン国防長官が1993年に行った「ボトム・アップ・レビュー」に端を発している。QDRの本来の目的は、米国が将来、直面するリスクのある安全保障上の脅威について中長期的な視点から、従来の立場にとらわれない議論を国防省内部で積み上げることで、国防政策を主導する戦略構想を作り上げていくことだった。

 今回のQDRは、当初の目的とは対極にある文書になったと言ってもいい。内容に2012年の「国防戦略指針(DSG)」の延長線以上の目新しい戦略的発想が見られないだけではない。QDR史上初めて、報告書の中の最終章で「予算強制削減措置のリスク」というタイトルの下、予算上の制約が今後、米軍の態勢や練度に与える可能性のあるリスクについて、かなりはっきりと言及している。特に、2016年以降、予算の強制削減措置が再び復活した場合に、米軍の能力や態勢にどのような悪影響が及ぶかについては詳細に述べられており、「予算陳情書」と見間違うかのような内容になっている。

 それだけではない。今年のQDRは発表の形態そのものも、これまでにないものだった。以前のQDRは、例えば、2010年2月を例に挙げると、ゲーツ国防長官とマレン統合参謀本部議長(いずれも当時、以下同)が揃って記者会見とブリーフィングを行い、それに引き続いてフロノイ政策担当国防次官とスタンレー海軍中将が記者に対してさらに詳細なブリーフィングを行った。2006年のQDR発表の際も、ヘンリー国防副次官とチャニック海軍中将がQDRの内容を発表するためだけの記者会見とブリーフィングを行っている。

 ところが、今年のQDRは、文書そのものが2015年度国防予算と同日発表になっただけではなく、記者会見やブリーフィングも、2015年度国防予算に関する記者会見・ブリーフィングとの「抱き合わせ」で行われた。そこでは、QDRに関するブリーフィングは、ワームス国防副次官によるもののみ。ブリーフィングの大半は、ヘール財務担当国防次官、及び後続の各軍種からの代表による2015年度国防予算の内容に充てられ、記者からの質問も、予算に関するものが大半を占めた。

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