2024年11月8日(金)

Wedge REPORT

2009年5月26日

批判を恐れた自民の3素封家

 「ふるさとに はや桜満つ ゆゑ問へば 冬の寒さに 耐へてこそあれ」

 4月18日、東京・新宿御苑で開かれた「桜を見る会」。麻生首相はこんな歌を披露し、冬に仕込んだ経済対策の効果に自信を示した。首相には「4次にわたる景気対策で、打つべき手は打った」という自負もあるのだろう。確かに、一連の対策は手段を選ばぬ消費刺激策のオンパレードだ。地方の公共事業の費用を肩代わりし、定額給付金に加えて子育て支援手当をバラまき、車やテレビの買い替えまで国が補助する。いずれも前代未聞、破格の大盤振る舞いである。

 だが、当初の案より圧縮された景気対策がある。贈与税の減免だ。追加経済対策には、新築住宅の購入や増改築費用の贈与を、500万円まで非課税とする減税策が盛り込まれた。発案者の与謝野経済財政・財務・金融相は当初、非課税枠を2000万円以上とすることを検討していた。麻生首相も「いいね、是非やろう」と飛びつき、自民党税制調査会に具体策の検討を指示した。

 ところが、税調内では一転して減税に対する慎重論が相次ぎ、結局、非課税枠は500万円に圧縮してしまったのである。

 「贈与を受けられる人はいいよね、という声だってある。選挙を前にしてやることなのか」

 税調顧問の町村信孝前官房長官は、その理由をこう説明する。別の自民党幹部はさらに、「麻生(〝総〟理)、笹川(〝総〟務会長)、鳩山(〝総〟務相)の『金持ち3総』が党や政府の要職にいるうちは、大規模な贈与税減税などできない」と付け加える。

 「3人は党を代表する素封家で、庶民の気持ちを逆なでする失言の前科もある。いま金持ち優遇ととられる政策を選択するのは、野党に爆弾と標的を一緒にプレゼントするようなものだ」

 住宅資金の贈与については、2005年末まで、550万円まで非課税とする特例があった。税調は贈与税減税の規模を、前例を踏み越えない規模に圧縮することで、「金持ち優遇」批判をかわそうとしたのだ。

 この結果、減税の経済効果もぐっと小さくなった。国土交通省によると、今回の減税による住宅投資の押し上げ効果は年間2800億円程度。新築住宅に置き換えると1万2000戸分で、昨年の住宅着工件数(109万戸)の1%程度に過ぎない。

 05年末に特例が打ち切られた後、住宅資金の贈与件数は年3万件近くも減った。今回の減税で着工件数が1万2000戸増えても、まだ特例打ち切り前の件数には及ばない。


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