2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月18日

 3月8-14日号の英エコノミスト誌は、昆明の無差別殺傷事件が起きた今、中国共産党はこれまでの少数民族政策を変える必要がある、と言っています。

 すなわち、昆明の無差別殺傷事件は全く正当化できないおぞましい犯罪であり、これを非難するのは当然だが、中国共産党は不愉快な現実――弾圧・開発・漢族移住政策を混合した従来の統合政策は、中国の支配を非漢民族に納得させるのに失敗した――も認めなければならない。

 当局は犯人を「新彊の過激派」、つまりウイグル人だと言っており、彼らはあるいは国外で訓練を受けたジハーディストかもしれない。しかし、そうした事実はどうあれ、ウイグル人による自暴自棄の行為が増えているのは確かで、新彊では毎週のように反政府暴力事件が起きている。

 中国共産党は、新彊は2千年来中国の一部だったと主張するが、実際はこの間ほとんどは中国帝国の周縁もしくは全く外にあった。併合の動きが始まったのは18世紀半ばの清朝の時代で、その後、1940年代に東トルキスタンとして独立を宣言したが、1949年には中国共産党が武力による併合を開始した。植民と開拓のために漢族の復員兵が送り込まれ、ソ連式の弾圧を行った。今や漢族が人口の5分の2を占め、経済的にも優位にある。

 今回の事件の動機は今後も解明されないかもしれないが、過激イスラム主義が中国の内部にまで浸透したという恐怖のために、新彊の弾圧問題が曖昧にされてはならない。ラマダンを禁じられ、宗教教育やウイグル語教育も制限されたウイグル人は、自分たちの文化もチベットの様に抹殺されてしまうと恐れている。チベットでも、これまでに100名以上が抗議の焼身自殺をしており、ダライラマの抑制的影響力がなければ、状況はもっと悪化していたかもしれない。要するに、新彊、チベット、内モンゴルは今も中国の植民地であり、中国共産党の下で帝国主義的な和平工作が続いていると言える。

 また、中国政府は、武力の抑えがなければ、新彊やチベットは中国から離脱しかねないと思っているらしく、大規模な軍隊を置いている。しかし、人々の怒りを誘発するような抑圧はかえってリスクを高める。


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