【WEDGE創刊25周年特集】英知25人が示す「日本の針路」

2014年4月24日

あるべき医療のかたちについて、医師であり、経営管理学修士(MBA)でもある筆者が論ずる。

山本雄士(やまもと・ゆうじ)
ソニーコンピュータサイエンス研究所リサーチャー、株式会社ミナケア代表取締役。
1974年生まれ。99年東京大学医学部を卒業後、同付属病院などで循環器内科、救急医療などに従事。2007年ハーバード経営大学院修了。内閣官房医療イノベーション推進室 企画調査官などを歴任。ヘルスケア全体のマネジメントを中心に、政策提言や講演活動を国内外で行っている。(撮影・吉澤健太)

 少子高齢化が進む日本は、超高齢社会を超えて限界国家ともいえる状況へ向かっている。国民医療費は毎年約1兆円のペースで伸び続け、約40兆円にまで膨張した。私が医療の最終形と考える「健康長寿を安く簡単に達成する」ことができれば、高齢者がもっと活躍でき、社会負担も小さく済むだろう。今後の日本の国力にも関わる喫緊の課題だ。

 その実現にはまず、「医師の理想像はブラック・ジャックのような天才外科医」─そんな価値観を変えなければならない。手術を成功させることは素晴らしいが、「手術が必要ないように、重症化を防ぐ」ことや「そもそも病気にさせない」ことをより重視すべきだ。健康を守るために最適化された医療は安いからだ。

 今の医療は診断、治療といったトラブルシューティングに偏重した、いわば病気になるまで待つ医療である。これを「ケアサイクル(健康を維持・回復するプロセス)全体を踏まえた医療」へ転換する必要がある。そのための施策の一つが、医療データの連結だ。

 医師はカルテに診察結果を記載するが、そうしたデータは病院ごとに断片的に記録される。一方、保険者(健康保険組合など)は健康診断の結果や診療内容など包括的なデータをもつが、カルテのように検査結果までは把握できていない。また、介護の情報は別の主体が持っている。ケアサイクル全体を踏まえるにはこの分断されたデータをつないで活用する必要がある。国民IDを上手に使うことで可能だろう。

 ケアサイクルの担い手も必要だ。専門知識をもち、一人ひとりを理想的なケアサイクルの波に乗せて、健康へナビゲートする人が必要となる。これによって、医療機関を自由に選べるフリーアクセスから、適正に選べるライトアクセスに進化できる。

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