世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月14日

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 イラン系アメリカ人評議会会長のトリタ・パルシが、ナショナル・インタレスト誌ウェブサイトに、4月3日付で「なぜサウジはパニックを起こしているのか」と題する論説を寄稿し、サウジのパニックは地域情勢全体への懸念によるもので、米・イラン関係の改善のみが原因ではない、と論じています。

 すなわち、オバマはサウジ訪問中に気付いたと思うが、最近、サウジ王国のすることにはパニックのような調子がある。具体的には、安保理理事国辞退、シリアでの独自政策、カタールとの断交、米・イラン関係改善への反対などである。

 イラン核対話へのサウジの反対は、イラン対サウジ、スンニ派対シーア派のライバル関係という文脈で理解されてきた。サウジがイランへの制裁解除、米・イラン関係改善を黙って見ているとは考えられないと言われてきた。

 しかし、サウジの反応を米・イラン関係改善への不快感のみで説明しきれるものではない。最近の諸情勢の発展が、サウジの一貫性のない行動を説明する。

 第1に、米国が石油生産を増やし、サウジへの依存が減っている。昨年は15%も増え、2015年にも米がサウジを抜き、世界一の石油生産国になる。これは脅威である。

 第2に、アラブの反乱は、米・サウジ間の距離を広げた。サウジは反ムバラク・デモに反対で、米国が抗議者の側に立ったのを裏切りと見なした。これまでは、アラブ専制主義が地域安定と石油供給を保障し、その見返りに米国が専制体制を保護する、との取り決めのようなものがあった。米国はその取り決めを尊重しなかった。サウジは、アラブの春がサウジに来た時には、米国はサウジ政権を助けないのではないかと考えている。

 第3に、サウジではその上に、王位継承危機が近い。副皇太子任命はあったが、次に第3世代への継承問題がある。

 第4に、オバマ政権のアジアへの軸足移動がある。中東での軍事プレゼンスは減少している。サウジ(それにイスラエル)は、米国が、シリアへの不介入が象徴する通り、地域秩序維持の責任を放棄している、と考えている。

 これらに加え、イランがその孤立を脱し、地域に再復帰しようとしている。サウジのパニックは、米・イラン接近だけではなく、より広い情勢変化に根差しているのである。

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