再エネ導入を減速するドイツ政府
4月8日にドイツ政府は再エネ法の見直しを閣議決定した。再エネによる発電比率を現在の25%から25年に40%から45%、35年に55%から60%にするとの目標を変えずに、電気料金の上昇を抑えるのを目的としている。再エネ導入のスピードを抑制するために導入量を制限する一方、国際競争力に曝される企業には引き続き原則負担額の免除を認めることになった。結果、多くの再エネ推進団体からドイツの再エネ推進策は終わったと評価されることになったが、電気料金上昇がドイツ経済に与える影響は、以下の具体策で以て政策転換を行うほど大きいということだ。
年間の再生可能エネルギーの導入については、上限値が設けられることになった。太陽光250万kW、陸上風力250万kW、バイオマス100万kW、洋上風力は20年までに650万kWだ。
電気料金上昇の影響を緩和するために、新たに自家消費分についてもFITの負担が求められることになった。10kW以上の新設再エネ設備については、1kW時当たり通常の負担額の50%、3.12セント、産業用の自家発設備については、通常の15%、0.94セントの負担になる。
さらに、固定価格買い取り制度ではなく市場での電気の売却が求められることになる。14年8月からは500kW以上の設備に適用されるが、16年からは250kW以上、17年からは100kW以上が対象となる。
国際競争力に影響があるとしてFITの免除を受けていた企業数は2100から1600に減ることになったが、免除を行うことにはEU委員会も同意した。その額は年間51億ユーロに相当すると報道されている。このドイツ政府の見直しはEU委員会とも綿密に打ち合わせた上で行われたものだ。翌9日に発表されたEU委員会の新しい政策でも市場の利用が打ち出された。
固定価格買い取り制度を見限る欧州
EU委員会は08年に環境保護に関する政府支援についてのガイドラインを定めたが、これを見直し、発電設備、エネルギー多消費型産業、インフラに関する政府支援まで含めたエネルギー・環境保護に関するガイドラインとして4月9日に発表を行った。14年7月1日から有効になる新ガイドラインの概要は以下の通りだ。
FITの支援による再エネ導入策を止め、入札方式による市場価格を元にした上乗せ制度(Feed-in Premium)の導入を各国政府に求める。15年から16年を試行期間とし、17年1月からは入札制度の導入が図られる。ただし、6MW以下の風力、1MW以下の太陽光発電設備については、必ずしも入札制度を利用する必要はない。3MW以下の風力、500kW以下の太陽光発電設備については、市場に参加する必然性が少ないことから、FITを含む政府の援助を受けることが可能だ。