チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年5月14日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’sを経て、13年1月より現職。

 2014年5月7日、中国海警の船舶とベトナム海上警察の船舶が、南シナ海の西沙諸島周辺海域で衝突した。中国及びベトナム双方が権利を主張する海域で、中国の石油企業が掘削作業を開始したことが原因である。これに対してベトナムが掘削作業阻止のために船舶を派出し、中国船がこれを排除しようとしたのだ。

南シナ海は中国にとって死活問題

 問題は、中国船がベトナム船に体当たりしたということではない。船舶が武器を使用せずに船舶の近接を阻止するために船体をねじ込むといった方法は採り得る行動だとも言える。現在入手し得る情報だけでは、衝突がどのようにして生起したかを理解することは難しい。

 問題は、中国企業が係争海域で実力行使に及んだことだ。中国が海警の船舶や海軍の艦艇を含む大量の艦船を送り込んだのは、ベトナムが強硬な妨害活動を行うことを予期していたからだと言える。それにもかかわらず、中国企業は採掘作業を強行したのだ。

 最近の中国の対ベトナム外交を見ていると、何故この時期に強行したのか、違和感が残る。現指導部に対する中国国内の批判や圧力が指導部の態度を変えさせた可能性もある。また、石油利権は現在の中国国内では非常に敏感な問題である。石油利権集団とこれを叩いて自ら掌握したい習近平指導部との間の権力闘争が関与している可能性もあるのだ。

 しかし、である。実力行使に及んだ時期の問題はあるにしても、大きな流れから言えば、ベトナムやフィリピンが中国に対する強い抗議活動を展開すれば、遅かれ早かれ、中国は実力行使に出ることになる。軍事衝突も辞さない。中国は、南シナ海における権利については、引き下がることをしないからだ。南シナ海は、中国にとって死活的に重要なのである。

ベトナム各地で起きている反中デモ。国民の不満も高まっている (写真:AP/アフロ)

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