2024年4月25日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年5月14日

米国はASEANと水面下での外交を

 中国の軍事増強の目的が、戦闘ではなく軍事プレゼンスを示すことであり、核抑止を以って米国の行動を抑えようとすることは、「中国に日本や米国と戦争する意図はない」ことを示唆するものでもある。しかし、これは、安心してよいという意味ではない。国際社会の秩序の変化は、非常に深刻な事態であるとさえ言える。米国はこの意味を理解するからこそ、抑止力の維持と中国との危機管理メカニズムの強化を続ける。

 一方で、中国にとって、「国際社会の秩序の変化」を実現するために南シナ海の確保は絶対条件である。中国は、自身にも甚大なダメージを与えるであろう日米との戦争は避けるとしても、南シナ海での中国の活動に抵抗する東南アジア各国との軍事衝突は辞さない。さらに、今回の中国とベトナムの衝突は、必ずしも政府が望まなくとも、外交的合理性に欠けても、衝突は起こり得ることを示している。

 更に中国は、5月中旬から下旬の期間に、南シナ海において中露合同演習を計画していると聞く。ロシアが躊躇している可能性もあるが、この計画は、南シナ海を確保するためには軍事力の使用を辞さないという中国の決意を示すものだ。ロシアを引き込むのは米国に対する牽制である。

 中国もベトナムも実力行使を躊躇しないのだから、小規模の衝突が継続するのは必然だと言える。この危機のエスカレートを抑えるのは、米国とASEAN諸国の水面下での外交活動しかないのかもしれない。

[特集]南シナ海をめぐる中国とベトナムの衝突

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