中国が、南シナ海で活動を行う外国漁船に対し、当局に許可を求めることを義務づけた法律を1月1日から施行している件について、米海軍大学のホームズ教授が、1月9日付Diplomat誌ウェブサイト掲載の論説で、これは警察権行使によって領有権主張を強めようとする戦略の一環である、と指摘しています。
すなわち、昨年11月、中国海南省の地方議会は、南シナ海の約3分の2に当たる海域で漁業を行う外国船舶は、事前に当局の許可を得なければならないとする決まりを設けた。
この一件にはいくつかのポイントがある。
第一に、このような状況の変化に驚くべきではない。中国の南シナ海に対する主張はここ数十年間続いている。9点線を引いているのがその例であるし、1974年には、中越が領有権を主張するパラセル諸島において、南ベトナムの小艦隊を蹴散らしたこともある。更に、スカボロー礁での中比対立の事例もあるように、こうした中国の行動は今日でも続いている。
第二に、この件を報じたAPの記者が「中国が南シナ海で“警察権”を行使している」という言葉を選んだのは適切である。ここでいう警察権とは、国土において秩序維持のための強制力という意味である。中国は、新たな規制を施行することで、主権を主張する海域・島嶼において、法執行を強制しようとしている。またこれに際して、中国は、自国の管轄権に対する非合法な挑戦であるというメッセージとして、人民解放軍ではなく、沿岸警備隊(海警)などの非軍事的機関を活用している。
これは私が「小さな棍棒外交(small-stick diplomacy)」と呼んでいるものである。小さな棍棒というのは、海警やその他の法執行機関のことであるが、中国の法執行機関は東南アジア諸国の軍隊よりも強力である。しかも、これらの法執行機関は、人民解放軍という「大きな棍棒」の後ろ盾を受けて活動できる。もし、こうした行動を効果的に押し返すことが誰にもできなければ、時間の経過とともに、中国は新たな基準を形成できることになろう。
第三に、海南省の一方的行動は、単に米国が言うところの「航行の自由」に対する挑戦の前触れというわけではない。外国漁船を当該海域から追い出す行為は、中国の国内法の遵守を強要することを意味しているが、その一方で中国は外国船の輸送には頼っている。これは「選択的アクセス拒否」とでも言うべきものである。