2024年11月21日(木)

中国メディアは何を報じているか

2014年5月13日

 この文章を読みすすめると白けた気持ちになるだろう。共産党の歴史に翻弄され続けてきた中国国民が、相変わらず引きずり回されていることを感じさせるものだからだ。過去の指導者についての自分に都合よい解釈で自己勢力の拡張に利するような意図が背後に見え隠れするからだ。

 この文章で正当化している人物を検証してみると既得権益を背景に跋扈する保守派の姿が見え隠れするだろう。まず薄一波。言わずと知れた先般無期懲役刑を受けた薄熙来・元重慶市委員会書記の父親である。そして軍の元トップである中央軍事委員会副主席の王震。その息子の王震氏は軍の総参謀部系統の軍需産業である保利集団を率い、そして金融業界、軍需産業にも隠然たる影響を行使し、中信集団を長年牛耳ってきた。こうした高官の子弟たちは「太子党」として親の権力を利用しビジネスに乗り出し、中国での繁栄を謳歌している者たちだ(5月1日にも電力業界を牛耳る李鵬元首相の娘の疑惑を紹介した)。彼らにとって体制がひっくり返ることは既得権益が脅かされることを意味するのだ。

 「天安門25周年」再評価を求める民主活動家たちへの当局の警戒感を示す出来事があった。「天安門事件」勉強会に参加した浦志強弁護士などの活動家たちが当局に拘束されたのだ。また著名なジャーナリスト高瑜女史が「機密漏えい」容疑で逮捕されている。彼女は政府が教育機関などに通達したとされるイデオロギーに関する通達(通称「9号文件」)の内容を漏らした容疑だという。

 この文章を読むと胡耀邦が総書記を失脚させられた口実がよくわかるが、それは今日でも効果をもつ。汚職取締りが中国における既得権益層を打破できずに、政府と民衆が既得権益層にからめとられている様子が窺える。既得権益層は決して自分の利益と地位が脅かされることをあからさまには言い立てないが、イデオロギーや治安や秩序維持の重要性を言い立て党の権威を強調する。本文は中国を制約する既得権益層のロジックを余すところなく示すものである。

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