4月からにわかに故・胡耀邦総書記を追悼する機運が高まっている。習近平国家主席と関係が近いとされる胡耀邦総書記の息子、胡徳平・前全国政治協商会議常務委員(日本の参議院議員に類似)が訪日し、硬直した日中関係を打開する「密使」として注目されたことがあるかもしれない。一昨年引退した胡錦濤前国家主席が故・胡耀邦総書記の旧家を訪れたことも大きいだろう。
4月15日は胡耀邦が逝去してからちょうど25年目に当たる「節目の年」だった。きたる6月4日は天安門事件の発生から25年目でもある。胡耀邦の急死に対する追悼が天安門事件の引き金になったため両者は密接に関係していることから当局は両者をどう扱うか頭を悩ませてきた。天安門事件が「動乱」だという政府の公式見解が覆される可能性は低いが、各ネットメディアでは胡耀邦の追悼特集を組む動きが見られ、彼の根強い人気が垣間見える。
生前の彼はリベラルで言論の自由や若手幹部の抜擢、改革路線や自由化推進を行ったことから多くの人の共感を呼び、その早すぎる死を悼む声が強い。それでも党や政府公式メディア(『人民日報』、『求是』誌や新華社など)が胡耀邦追悼を取り上げることは結局なかった。胡耀邦追悼の動きが天安門事件の再評価要求に繋がりかねないので当局の警戒感は根強い。
胡耀邦評価を巡る右派と左派の綱引き
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今回、保守派の立場から胡耀邦追悼を警戒する論評を紹介したい。「鳥有網刊」サイトの論評「胡耀邦記念に便乗しての転覆を警戒せよ 国安委が襲来」という文章だ。同サイトは中国国内で保守グループが開設していた「鳥有之郷」サイトが基になっているが、言論の激しさと論争の大きさから当局によって一時閉鎖された経緯がある。そのサイトをリニューアルしたのがこの「鳥有網刊」である。一時期、ネット書店の形でほそぼそとサイトを開設していたが、その後、論評ページも開設され、毎日更新されている。
この文章が興味深いのは、文章を執筆した保守的な左派が、右派※1による胡耀邦や天安門事件に対する政府の評価を覆させようという動きを警戒しているのが窺えることだ。
※1 中国で右派左派の区分を単純化すれば、日本と逆である。一般的に右派は民主や自由など普遍的価値を主張するリベラル、左派は中国特色や毛沢東を礼賛する保守勢力と捉えられている。