クリミアと尖閣は表裏一体
日米同盟の緊密化が世界秩序を維持する


中西輝政 (なかにし・てるまさ)  京都大学教授

1947年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。ケンブリッジ大学大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て、現職。専攻は国際政治学、国際関係史、文明史。近著に『日本の悲劇 怨念の政治家小沢一郎論』(PHP)がある。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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ウクライナ東部では親ロシア派武装勢力が占拠を続け、解決の見込みは依然立たない。今回の事態は、米欧間のスタンスのズレや米国の弱腰な外交姿勢に原因があった。この危機に対し、米国とEU、日本は今後一致してロシアに厳しく対処しなければならない。三者間に亀裂を見出せば、ロシアはさらにつけ込んでくる。問題はそれだけではない。ウクライナ危機への対応を誤れば、中国が尖閣をめぐって日本への攻勢を強めてくるー。

 3月18日にロシアが力づくでクリミアを併合した後、ウクライナ東部でも親ロシア派武装勢力による公共施設などの占拠が広がった。4月17日の「ジュネーブ四者合意」にもかかわらず、筆者が本稿を執筆している4月下旬の時点で、この親ロシア派の武装解除や公共施設の明け渡しは履行されておらず、早期に事態が打開される見込みは立っていない。これは、冷戦後の国際秩序が崩壊の瀬戸際にあることを意味している。

 今回の事態を招いたのは、ウクライナに対するロシアの野心に加え、ウクライナの将来像をめぐる米欧間のズレ、そして何よりも米国の弱腰な外交姿勢に原因があったといえる。しかし、この危機に際し米国とEU、そして日本は何よりも一致してロシアの行動に対し厳しく対処していかなければならない。

 米国とEUや日本の間に少しでも亀裂を見出せば、ロシアはさらにつけ込んでくるだろう。日本にとって問題はそれだけでは済まない。中国である。米国と日本の間にクリミア併合に対するスタンスのズレ、あるいはロシアに対する制裁に歩調のズレを見出せば、中国はここぞとばかり日米間に楔を打ち込み尖閣諸島をめぐる攻勢を強めてくるだろう。

 たしかに、後で見る通り4月の日米首脳会談で、米国のオバマ大統領は明確に日米安保の尖閣への適用に言及した。しかし、歴史問題を絡めてさらに日本を孤立させ尖閣奪取につなげようとする中国を前にして、日本はこれまで以上に緊密な日米同盟の維持に一層の努力を払う必要があるのである。

日米首脳会談の様子(4月24日、東京都港区元赤坂の迎賓館にて、提供・代表撮影/ロイター/アフロ)
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著者

中西輝政(なかにし・てるまさ)

京都大学教授

1947年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。ケンブリッジ大学大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て、現職。専攻は国際政治学、国際関係史、文明史。近著に『日本の悲劇 怨念の政治家小沢一郎論』(PHP)がある。

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