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2014年5月22日

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中西輝政 (なかにし・てるまさ)

京都大学教授

1947年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。ケンブリッジ大学大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て、現職。専攻は国際政治学、国際関係史、文明史。近著に『日本の悲劇 怨念の政治家小沢一郎論』(PHP)がある。

 ただ、ここで重要なことは、こうしたウクライナ危機やシリア、北朝鮮の核問題などで見せるオバマ政権の劇的なまでの弱腰姿勢に対して、「米国自体の力が大きく弱体化したから」「米国は世界の警察であることを放棄した」と勘違いしてはいけない。現状で繰り広げられている問題は、あくまで「オバマ問題」であって、「米国問題」ではないということである。

 そもそも、イラクやアフガンでの「戦争をやめよ」と叫んで登場したオバマ氏は、2008年、12年の大統領選挙においても「外交は何よりも話し合いで」と米国民に訴えて当選した。

 これはある意味、米国という特異な民主主義国としての宿命でもある。前任のブッシュ政権においてイラク戦争が泥沼化し、イラクとアフガン双方で大きな犠牲を払った。その後を受けた政権として、大きく振り子を振った時代の雰囲気で、少し極端なハト派であるオバマ氏が米国民の信任を得て大統領に選ばれた、というに過ぎないのである。

 ただ10年代に入り、冷静さを取り戻した米国では、米国民の6~7割を占めると言われるリアリストに対して、大統領再選のためには「自分はリアリストである」と主張しないと、彼らからそっぽを向かれてしまう。そのためあたかも現実的な抑止策を考えているかのようにアピールする必要があった。

 これが端的に表れているのが11年のいわゆる「アジア・ピボット」路線である。再選を目指す大統領選挙にアジア重点戦略を打ち出して臨んだのだ。そして無事再選されると、再び掌を返すように元の極端なハト派に戻ってしまったというわけだ。

 またオバマ氏のこうした姿には、「核なき世界」を訴えてノーベル平和賞を受賞した実績が歴史に残る出来事として永遠に賞賛されることを願うエゴが表れている。つまり、ここ数年の米国の行動はこのオバマ氏個人の外交方針によるものであり、米国の外交方針そのものが変わったわけではないのだ。

 依然米国自体は世界の覇権国としての実力を持ち続けている。中長期的に見てもその地位が変わらないことは、本誌14年5月号の拙稿「25年後の米中と日本がとるべき長期戦略」で筆者が述べたとおりである。こうした大局的な趨勢を日本も見誤ってはならない。

尖閣と裏腹のウクライナ問題

 昨今、日本において、安倍政権とプーチン政権が北方領土問題を見すえながら外交関係を緊密化させてきた流れの中で、米国による制裁強化にそれほど協調することなく、「日本は日本の立場でロシアに接していけばよい」という声も聞こえてくる。

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