世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月5日

 3月25日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙で、ゲーツ元米国防長官は、プーチンの挑戦はクリミア、ウクライナにとどまらず、冷戦後の世界秩序に対する挑戦であり、西側指導者はこれに毅然として立ち向かうべきである、と述べています。

 すなわち、プーチンは、西側が冷戦に勝ったことで、西側に強い憤りを持っている。彼は、愛するソ連の崩壊を「20世紀最悪の地政学的惨事」と呼び、特に米国を非難している。ロシアによるクリミア併合を発表した3月18日の演説で、1990年代のロシアの屈辱を列挙した。経済の崩壊、ワルシャワ条約加盟国のNATOへの加入、西側によるセルビアなどでのロシアの利害の排除などである。

 プーチンは、政治的、経済的そして安全保障面でのロシアの勢力圏と支配圏を確立しようとしている。大戦略があるわけではなく、機会主義的で残酷な野望である。プーチンはロシアの憲法上2024年まで大統領でいられるので、忍耐もある。

 ウクライナはその規模からいって、また千年以上前のロシア帝国の誕生の地であったことから、プーチンの考える親ロシア圏の中心であり、キエフに親ロシア政権が再現されるまで満足しないだろう。

 プーチンの世界観は欧米の指導者とは劇的に異なっていて、国際法を重視せず、国境は交渉や法の原則以外でも変更できると考えている。西側が国家間のウィン・ウィン関係を重視しているのに対し、プーチンにとっては、全ての取引は勝つか負けるかのゼロ・サム・ゲームである。

 西側がロシアの周辺地域に対するプーチンの野望に対抗する唯一の方法は、長期的な戦略を実施することである。すなわち、プーチンの世界観と目的、そして目的達成の手段が、時間とともにロシアを劇的に弱め、孤立させることを明らかにするような行動をとることである。

 ロシアの石油、ガスに対する欧州の依存は減らさなければならず、西側に負担となるものでも、真に意味のある経済制裁は課すべきである。ロシアに隣接するNATO同盟国の軍事力を強化し、バルト諸国のロシアに対する経済的、またはサイバー上の脆弱性を減少させるべきである。

 西側の対ロシア投資は制限し、ロシアに正統性を与えるG8や他のフォーラムからロシアを追放すべきである。米国の国防予算を、オバマが1年前に2014年予算で提案した水準に戻し、米軍の欧州からの撤退を中止すべきである。そして、欧州は、モルドバ、グルジア、ウクライナと協力協定を結ぶべきである。

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