2024年4月23日(火)

Wedge REPORT

2014年5月19日

 じつは、NYタイムズは2005年に一部のウェブコンテンツに課金制を導入し、2007年に撤退した過去がある。当時、コンテンツ課金の成功例として先行していたのは、米Wall Street Journal(以下、WSJ)や英Financial Timesといった専門性の高い経済紙で、NYタイムズをはじめとする一般紙が課金に成功するのは難しいと考えられていた。

 しかし、2007年の課金撤退から約4年の歳月を経て、NYタイムズは新たにメーター制による課金を開始。以降、順調に有料購読者数を伸ばし、2013年末の時点で76万人の読者を獲得している。Jesse Holcomb氏の言葉を裏付けるように、NYタイムズで広報を担当するLinda Zebian氏もこう語る。

「NYタイムズの自社ビル内にはCIGという調査会社が入居しており、紙とデジタルの両面において、読者の習慣を徹底的に分析しています」

広告収入の落ち込みは避けられない

「広告収入の落ち込みは今後も避けられない状況で、読者にいかにお金を払ってもらうかがメディアにとって重要になってきています」(Jesse Holcomb氏)

 上のグラフは、米国における新聞社の広告収入を紙とウェブに分解したものだ。ウェブの広告収入は徐々に増えているものの、紙の広告収入の落ち幅を補えるほどには育っていないことがわかる。

 NYタイムズ電子版は2011年のメーター制開始以降、読める端末の範囲に応じて3つの月額コースを提供してきた。右の表を見るとわかる通り、これらは利便性に応じた料金メニューである。そして2014年4月、NYタイムズは新たに、コンテンツに応じた2種類の課金メニューを追加した。

 ひとつは、おもに若者をターゲットとする「NYT NOW」というアプリ。月額$8で、編集部がキュレーションしたコンテンツを毎日読者に届けるというもの。もうひとつは、コアな読者をターゲットとした「Times Premier」で、こちらは月額$45。取材の裏側を見せることで、より深い内容を伝えるというものだ。

「NYT NOW」がコンテンツを限定することで料金を安く設定し、読者の裾野を広げる一方で、「Times Premier」はコアな読者からさらに料金を徴収する、屋上建屋的な収益確保の狙いが窺える。今後も続くであろう広告収入の落ち込みをカバーするには、コンテンツを充実させつつ、さまざまな読者層に応じた課金メニューを増やしていくことが有効と考えられているようだ。

 また、Tony Brancato氏は、すでに次なる課金メニューも考えているという。

「今年の夏には、『オピニオン』と『クッキング』の有料版を始める予定です。こうしたコンテンツには、もっと深い情報を読みたいという“読者のニーズ”があることがわかっているから」


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