チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年5月26日

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阿古智子 (あこ・ともこ)

東京大学総合文化研究科准教授

1971年、大阪府生まれ。香港大学大学院博士課程修了。在中国日本大使館専門調査員、学習院女子大学准教授、早稲田大学国際教養学部准教授などを経て、2013年から現職。専門は現代中国論。著書に『貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告』(新潮社)がある。

浦志強、刑事拘留される

 中国の人権派弁護士の浦志強が5月3日、元中国社会科学院研究員の徐友漁ら改革派知識人と共に、1989年の天安門事件を振り返る内輪の集会に参加した後、騒動挑発罪の容疑で当局に拘束された。私は自分の研究の必要上、普段から浦弁護士によく話を聞かせてもらっており、また、子どもたちを含む家族ぐるみでつき合っていることもあり、第一報を聞いた時、衝撃を隠せず、非常に動揺した。しかしその反面、ついにこの時が来たかとも思った。

浦志強弁護士。筆者とも度々交流していた
(提供:筆者)

 なぜ、私がそう思ったかというと、浦弁護士は「人権派弁護士」と呼ばれる中国の弁護士の中でも特に目立つ存在であり、中国の現政権が抱える根源的な問題にメスを入れようとしてきたからだ。中国当局の関係者にとってみれば、最も痛いところをつかれるわけであり、政治腐敗や経済成長の鈍化で正統性の危機に陥りつつある中国政府にとって、非常に目障りで、手強い相手でもある。何とかして、浦弁護士に打撃を与えようと思っていたとしても不思議ではない。

 そう考えられるのは、5月3日の集会に参加していない浦弁護士の関係者も次々に拘束されているからだ。浦弁護士の姪で、浦弁護士の弁護人を務める予定だった弁護士、元サウスチャイナモーニングポストの記者で、法曹界やメディア関係者の国際交流などを進める団体の主催者、浦弁護士に度々取材していたといわれる日本経済新聞重慶支局の中国人スタッフも拘束された模様だ。

 浦弁護士については、これまで本サイトで紹介しているが(過去記事参照)、本稿で今一度、浦弁護士がやってきたこと、やろうとしていることを振り返り、浦弁護士やその関係者がこのような状況に置かれていることの意味を考えたい。

言論の自由を一貫して主張

 浦志強は、一貫して「言論の自由」の不当な侵害と考えられる事例に着目し、記者、作家、芸術家、一般市民の弁護を引き受けてきた。

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