チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年5月26日

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阿古智子 (あこ・ともこ)

東京大学総合文化研究科准教授

1971年、大阪府生まれ。香港大学大学院博士課程修了。在中国日本大使館専門調査員、学習院女子大学准教授、早稲田大学国際教養学部准教授などを経て、2013年から現職。専門は現代中国論。著書に『貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告』(新潮社)がある。

 2007年には、ベストセラー作家の章詒和から、著書の発禁処分の取り消しを求める訴訟の代理人を依頼された。浦弁護士はこの時、「学者が自由に歴史を研究し、発表できないような国は、何の創造もできない」と述べ、共産党政権の言論弾圧を批判した。

 章詒和は反右派闘争で「右派の筆頭」とされ、失脚した章伯鈞(中国民主同盟第一副主席で中華人民共和国の初代交通大臣)の娘で、章詒和自身も反革命罪で懲役刑を受け、1968年から10年間服役している。名誉回復後、中国芸術院戯曲研究所に勤務し、演劇や歴史の研究に従事する一方で、多くの著作を発表したが、そのうち、何冊かが発禁処分となった。

 浦弁護士は章詒和の案件に関して、「国家新聞出版総署の出版禁止措置は、作家の著作を発行する権利を侵しただけでなく、印税収入を奪い、財産権を侵害する行為である」として、行政訴訟を起こそうとした。しかし、出版の自由を求める動きに当局は敏感に反応し、1カ月後、裁判所は受理しないという決定を下した。

 章詒和の著作と同じように発禁処分となった『中国農民調査』の作者の陳桂棣と春桃が、本書に登場する安徽省阜陽市の党書記に名誉毀損で訴えられた際には、浦弁護士がこの2人の弁護人を務めた。同書は、地方の役人や警察の横暴とそれに耐えかねて抗議する農民を克明に描き出し、国内外で大きな反響を呼んだ。

 中国には、日本の刑法のように、名誉毀損に関して公務員と一般の人を区別するような規定はなく、国民が政府や政策を批判するには大きなリスクが伴う。本裁判は、2004年8月の公判以降、現在に至るまで判決が出ていないが、これについて浦弁護士は、「この裁判で党の役人を批判できるとなれば、最終的に総書記さえも批判できるようになる。党幹部はそれを恐れているのだろう」と話した。

李鵬首相の出廷を要求する大胆不敵さ

 2012年6月、浦志強は芸術家の艾未未に対する巨額追徴課税の決定を不服とする行政訴訟の代理人として法廷に立った。艾未未は、詩人・艾青の息子で、オリンピックメインスタジアムの鳥の巣の設計をしたことでも有名だ。社会問題に関心を持ち、ドキュメンタリーも制作する艾未未は、四川大地震の学校の校舎倒壊について調査を行い、ブログを閉鎖されたり、警官に殴打されたりしていた。

 浦弁護士が艾未未と最初に出会ったのは、譚作人の裁判を担当していた2009年だった。譚作人は天安門事件を記念する文書を海外で発表したことや海外の活動家との関係が問題視され、国家政権転覆煽動罪で懲役5年の有罪となり、今年刑期を終えて出所してからも、厳しい監視下に置かれている。

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