復活のキーワード

2014年6月30日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、東京証券部、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務める。11年からフリーに。熊本学園大学招聘教授。近著に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)。

財政状況の悪化を背景に、国民からも消費税率引き上げは受け入れられた。しかし歳入を増やしても、支出の削減に取り組まなければ、赤字垂れ流しは終わらない。個人にとっても同じことが言える。支払う税金より、受けるサービスの方が多い人は、「タックス・イーター」と呼ばれる。イーターが増えれば、そのツケは再び国民に返ってくる。

 東日本大震災をきっかけに始まったこのコラムは、単なる政策批判にとどまらず、日本復活に向けた具体的な提言をすることが狙いだった。諸外国の例や取材する経営者らのアイデアを盛り込んで、問題を指摘するだけではなく、新しい視点を提示するように心掛けてきた。中にはその後、政府の政策に反映されたものもあれば、まったくの空振りに終わっているものもある。震災から3年がたち、景気にも明るさが見えてきたので、ひとまず連載を終えることにしたい。

 もちろん、まだまだ日本は復活したと言える状況になったわけではない。中でも多くの知識人が「危機的」と指摘するのは、日本政府の過大な借金である。財務省が発表する「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」によると、昨年12月末時点の残高は1017兆9459億円。この連載を始める直前の2011年3月末は924兆3596億円だったから100兆円近く増えたことになる。借金は減るどころか増え続けているのである。

 財務省が強調するように、GDP(国内総生産)対比でも増え続けており、13年末で日本は224%。米国の113%や英国の110%、イタリアの130%を大幅に上回る先進国最大の借金国になった。しかも毎年、増え続けているのだ。

 では、本気で借金を減らそうとすれば、どうするか。まずやるべきことは増え続ける借金を抑えること、つまり出血を止めることだ。企業でも家計でも、毎月の赤字を出さないようにするのは常識である。赤字を出さないためには収入を増やすか支出を減らすしかない。霞が関からすれば支出を減らすのは大変なので、収入を増やすことばかり考える。国の場合、国債などの借金も収入として扱われるので、どんどん借金する。あるいは税率を引き上げることで収入を増やそうとする。なかなか支出の削減には取り組まない。

 多くの国民は国の借金は大きな問題だと理解している。だからこそ、4月からの消費税率引き上げも受け入れた。収入と支出のバランスを借金なしに取り戻す水準を「プライマリー・バランス」と言うが、そこにはまだまだ遠い。支出の削減に本気で取り組まないので、赤字の垂れ流しが続いているのだ。

 もちろん、アベノミクスの成長戦略で経済規模を大きくすれば、GDP比の借金は小さくなる。また、景気が良くなれば税収も増えるので、赤字体質から脱却するには経済成長は不可欠だ。だが、ここまで積み上がった借金を減らすには、成長だけでは不十分。支出の見直しが不可欠なのだ。

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