佐藤忠男の映画人国記

2014年6月12日

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 秋田県は多くの映画人を出している。とくに大衆映画の名監督が多い。

 まずドタバタ喜劇専門でとくに無声映画時代には奇想天外なギャグの連発で“喜劇の神様”とまで言われた斎藤寅二郎監督(1905-82年)が由利郡出身である。エノケンや伴淳の傑作が多い。代表作は終戦の年の年末に、まだ一面焼け跡の東京でエンタツ・アチャコや古川緑波(ろっぱ)を存分に動かした「東京五人男」(1945年)だろう。私は少年兵から復員してきたばかりの15歳でこの喜劇に腹をかかえて笑って、戦争に負けてかえってよかったのかもしれないと思ったものである。

 戦後の松竹で高峰三枝子の歌謡映画などをヒットさせ、さらに時代劇全盛時代の東映で市川右太衛門の「旗本退屈男」などのヒットシリーズを多く手掛けた佐々木康(やすし)監督(1908-93年)が平鹿郡雄物川町(現横手市)の出身である。

 作品があまり残っていないために知る人ぞ知るという存在だが、石田民三監督(1901-72年)は平鹿郡増田町(現横手市)出身。戦前の時代劇の女性もので地味だが名作とされているのが「花ちりぬ」(1938年)「むかしの歌」(1939年)である。

 大舘市出身の長澤雅彦監督は2001年のたしかデビュー作の「ココニイルコト」で、一見ひ弱そうな現代青年の意外に根性の据わったところを描いて注目されたものだったが、それを演じたのが若き日の堺雅人だった。あれはユニークなキャラクターの発見だった。

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 県立秋田高校卒の成田祐介は「あぶない刑事」などのテレビの監督の仕事が多いが、映画監督としては「あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE」(1998年)「花と蛇3」(2010年)などがある。

 河辺郡河辺町(現秋田市)出身の若松節朗監督も主としてテレビドラマの監督であるが、映画では超大作と言っていい「沈まぬ太陽」(2009年)を立派な作品に仕上げてみせた。

 俳優では山谷初男が仙北郡角館町(現仙北市)。新劇から映画に進出して、気のいい悪党みたいな人を喰った役で印象に残る。

 大坂志郎(1920-89年)は戦後に「はたちの青春」(1946年)という松竹作品で、占領軍の要請で日本映画最初の本当のキッス・シーンを幾野道子と演じた。当時は軽い愛嬌のある二枚目だったが、のちに年輪を加えて渋いいい味がたたずまいににじみ出る名脇役になった。山本郡能代港町(現能代市)の出身である。

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