サイバー空間の権力論

2014年8月14日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

学習院大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 前回の連載では、忘れられる権利をめぐる問題から、プライバシー概念に関わる世界の思惑を考察した(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3944)。

 本連載で主張してきたように、インターネット環境やプライバシー概念については、国家間で共通した枠組みの成立が困難であり、それ故に大国間での様々な権力闘争が暗黙裡に行われているのが現状だ。そこで問題になるのは、アメリカとEUであったり、アメリカに反旗を翻したブラジルの関係であった。しかし、忘れてはならない国がある。そう、中国だ。中国の世界における影響力が増すなかで、サイバー空間をめぐる中国の姿勢が最近顕著に現れている。その際たる事例が中国政府内の海外製品締め出し事件だ。

 今回は、サイバー空間をめぐる中国の態度について考察したい。

政府機関でApple製品が購入対象外に

 米国時間8月6日、Bloombergが報じたところによれば、中国政府の国家発展改革委員会および財務部が7月に配布した、政府機関が使用する公共調達品リストから、「iPad」「MacBook Air」「MacBook Pro」などを含んだ10種類のApple製品の除外が判明した( http://www.bloomberg.com/news/2014-08-06/china-said-to-exclude-apple-from-procurement-list.html)。これは、中国共産党中央部や官公庁だけでなく、地方政府などのあらゆる政府機関において、アップル製品が購入対象外になることを意味する。中国政府によれば、公共資金をApple製品に使うことは「セキュリティ上の問題」からできなくなるというのだ。

 この流れは今にはじまったことではない。Appleをめぐっては、7月11日、中国の国営放送であるCCTVがiPhoneのセキュリティ問題を取り上げており、iPhoneの「Frequent Location」という機能によってAppleがユーザーの追跡や情報収集が可能になり、これが国家安全保障上問題だと指摘したのだ。当然Appleはこれに対して、位置情報はユーザーのiOSデバイス上でのみ保存され、Appleのサーバーに情報が渡ることはないと反論している。

 Appleの中国市場の売上は年々上昇しており、7月下旬の決算報告(4-6月期)では、中国、香港、台湾を含んだ売上が59億ドルと、その前年の46億ドルから大幅アップしている。もちろん売上は個人向けのiPhoneがかなりの割合を含んでいると推測されることから、今回の事件がAppleに経済的な打撃を与えないとの予測は可能だ。しかし、問題は経済だけで終わるわけもなく、事態は複雑化している。このような中国による製品締め出しはAppleだけではないからだ。

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