サイバー空間の権力論

2014年5月29日

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 前回の連載では「リベンジポルノ」を取り上げた(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3758)。リベンジポルノ問題の一つに、海外のサーバーにアップされた画像を消去するために行う、プロバイダー削除依頼の時間的コストが挙げられた。また海外によっては、削除依頼を現地の公用語でしか受け付けない国もあるばかりか、そもそも削除依頼が無視されることもしばしばであろう。

 世界をつなげるインターネットではあるが、インターネット世界に統一された法はなく、各国それぞれが各々の法に則って管理が行われているのが現状だ。ただし、インターネット管理を巡っては、アメリカによる強力な支配がなされているとの批判から、よりインターネットをオープンにするための議論が世界中で広まっている。インターネットは誰のものなのか、そして未来のインターネットは我々にとってどのようなものになるのか。世界の最前線を考察したい。

ブラジル発「ネット憲法」
個人情報の扱いに注目

 ブラジル上院が今年の4月22日、全会一致である法案を可決した。それは、インターネットに関するブラジル市民の権利に関するもので、ポルトガル語では「Marco Civil da Internet」と呼ばれる(以下marco civil)。以下に説明する通り、この法案、世界からは「インターネット憲法」とも呼ばれるほど大きな話題となった。

 ではこの法案はどのようなものか。簡単にいえば、政府や企業、個人のプライバシーを保護する一方で、ネットワークの中立性やアクセスの平等を明記しているもの。個人や政府のどちらも納得できるような内容になっており、専門家からの評価も高く、優れた法案である。

 中でも注目すべき点は、海外のサーバーに蓄積されているブラジル国民の個人情報についてである。例えばFacebookやGoogleを想定してみてほしい。我々はこれらのサービスを利用することと引き換えに、大量の個人情報を一企業に渡している。Googleであれば、検索履歴から個人の興味・関心が抽出されており、ネット閲覧時に自分の好みの商品広告が表示されるようになっている。こうした情報はビッグデータ等にも利用可能であることから、ビジネスへ分野で注目されている。

 とはいえ、個人情報は様々に利用されるもの。自分の検索履歴やSNS上の友人が把握されたり、メタデータといわれる通信履歴によっても、個人の行動範囲や交友範囲、生活スタイル等もわかってしまう。企業は個人のプライバシーには十分配慮するとはいえ、それでも気味の悪い感覚がするものだ。

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