世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年8月28日

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 エコノミスト誌7月19-25日号は、英国は自らの倫理基準を再認識し、中国と対峙して香港の自由を守るべき時に来ている、との記事を掲載しています。

 すなわち、7月15日に、梁振英・香港行政長官が香港の選挙制度に関する報告書を北京に提出し、その中で、大多数の香港人は中国の好まない人物を「委員会」が排除する方式に満足しており、今以上の政治的自由は欲していない、と示唆した。これは、多くの香港人を怒らせ、中国への強い批判が起きている。そうした中、際立つのが英国の沈黙だ。

 最近、香港政界の大物2名がキャメロン首相との面会を求めてロンドンに行った時も、会えたのはクレッグ副首相だけだった。クレッグは、英国は「一国二制度の擁護から逃げはしない」と述べたが、英国は、まさに逃げている。

 中国は、対中批判を抑えるよう香港メディアに圧力をかけるなど、香港の選挙制度への影響力を強めてきた。また、北京が6月に発表した「香港白書」は、香港の自治はあくまで北京が許容する範囲内のものだとし、さらに、香港の裁判官にも「愛国的であること」、つまり、中国の国益を尊重することを要求した。これは、コモン・ローに基づく香港の英国式システムとは矛盾し、司法の独立を脅かす。

 さらに、白書を出した翌週には、李克強首相が英国を公式に訪問し、通常は国家元首の特権である女王との会見を許された。中国は、2年前、キャメロン首相がダライ・ラマと会って以来、英国を冷遇してきたが、今回、李は240億ドル相当の取引に調印した。これは、過去を水に流そうという中国側からのシグナルだった。今後、英中関係がどうなるか、改めて言うまでもない。中国の問題に口出ししない限り、英国は中国から取引を提示してもらえるだろう。

 この暗黙の約束がどのような結果をもたらすのか、今それが明らかになりつつある。今月、英外務省が年2回出す香港報告の最新版が出たが、その中に「香港白書」や北京への批判は一切なかった。

 これは香港にとってよいことではない。香港が世界の金融センターとして機能するのは、報道の自由、司法の独立、法の支配があるからだ。このままでは基本法が保証する自治も侵食されていくだろう。

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