米外交問題評議会研究員のローレン・ディッキーとヘリア・イガーニが、8月25日付Diplomat誌ウェブサイト掲載の論説で、イランと中国の接近を指摘し、イラン核交渉が失敗すれば、イラン・中国関係も困難になるので、双方ともにそれは望んでいない、と論じています。
すなわち、制裁でイランの市場アクセスが制約される中、中国はイランの石油を買い、国連安保理やP5+1とイランの交渉でイランの利益を代弁している。両国間には意見の相違もあるが、全体としては、両国は利益を共有している。
中国はイランから2014年上半期、日量63万バレルの石油を買った。イランは第3位の中国への原油供給国であり、中国の1年の供給量の12%を占めている。
米国は、中国に対し、イランからの原油輸入削減と引き換えに、制裁実施猶予を認めたが、中・イラン間のエネルギー取引は減っていない。習近平政権は、制裁実施猶予を今年も取り付けるなど、米国の信頼を得ているが、イランの石油を購入することによって、イランの政権基盤を強化している。
エネルギー以外の貿易でも、中国は、EUに代わり、イランの第1の貿易相手になっている。中国外務省によれば、2012年の両国間の貿易額は360億ドルであり、イランによれば、そのうち石油以外の貿易額が130億ドルである。中国共産党は、シルク・ロード経済ベルト建設を重視している。陸上シルク・ロードはイラン北部を通る。そのインフラはイランのためにもなる。
核交渉についての暫定合意とその延長は、中国に制裁実施猶予を更に与える理由になっている。暫定合意により、イランは、12億ドルの凍結資産を回収し、日量100万バレルまで輸出し得る。核交渉が不成功に終わると、西側は制裁を復活させ、中国への猶予もなくなろう。
2014年、イランは、アザデガン油田での中国との契約を、中国石油天然気集団公司(CNPC)による契約違反を理由として、突然キャンセルした。しかし他の油田では、中国石油化工集団公司(Sinopec)が、生産を倍増させている。中国は一つのやり方が駄目になれば、代わりのエネルギー取得の方法を見つけて来る。