日本のリベラルが考えるべき8つのこと


原田 泰 (はらだ・ゆたか)  早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

経済の常識 VS 政策の非常識

なぜ根拠に基づかない政策がまかり通り、本質的な問いが発せられないのか。少子高齢化、経済政策、財政赤字など、日本の戦後モデルに歪が生じているにも関わらず、政治はポピュリズムに陥り、50年、100年先の日本に責任を持てる判断を下していない。根拠・経済原則に基づく合理性という観点から、不合理な政策の問題点を指摘する。

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前々回本欄に執筆した「なぜ日本のリベラルはリフレ政策が嫌いなのか」(2014年9月5日)が、読者の皆様のお蔭で話題になったことから、今度は、「日本のリベラルはどうしたら良いのか」というお題を編集部からいただいた。読者の皆様、大変ありがとうございます。「リベラルでないお前から、そんな話は聞きたくない」とおっしゃる方もいるだろうが、まあ、私の話を聞いて欲しい。

 リベラルとは、一般に、雇用、労働条件、人権、少数派への寛容、女性の社会進出、社会保障政策、格差、弱者保護、情報公開などに敏感な政治的立場と平和主義を示すものであるだろう。「なぜ日本のリベラルはリフレ政策が嫌いなのか」では、リフレ政策が雇用を拡大し、労働条件を改善し、格差も縮小するものなのに、なぜリフレ政策に反対なのかと問うたものだ。

リベラルが考えるべき8つのこと

 日本のリベラルが第1にするべきことは雇用に関心を持つことである。リフレ政策が嫌いなら、それに代わる、効率的な雇用拡大政策と労働条件の改善策を見出さなければならない。

 第2は、人権である。日本のリベラルは、日本の人権侵害には敏感だが(ただし、後述するように、本気でないと思われるところもある)、旧共産圏諸国と途上国の人権侵害には鈍感だった。このような態度では国民に信用されない。私は、人権外交は、リベラルの一つの旗になるのではないかと思う。ここでの人権は、言論・信条・結社・集会の自由、不当な拘束の禁止、男女差別の禁止、児童労働の禁止などだが、生存権もある。

 現行の日本の生活保護制度が認めている生存権は、財政負担が重すぎて、すべての国民に保障することはできない。生活保護を受けている人は人口の1.6%だが(国立社会保障・人口問題研究所、「生活保護」に関する公的統計データ一覧)、それ以下の所得で暮らしている人は13%であるという(橘木俊詔『格差社会』18頁、岩波新書、2006年)。現在の生活保護予算は地方負担を含めて3.8兆円であるから、すべての人に生活保護水準の所得を保証するためには、31兆円(3.8×13÷1.6)の予算が必要になる。この生存権と、貧しい国の人々が日本に移住することの両方を認めては、財政的に収拾がつかなくなる。欧米のリベラルは移民に寛容だが、日本のリベラルは、移民の財政コストをどうするかを考えておかなければならない。

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「経済の常識 VS 政策の非常識」

著者

原田 泰(はらだ・ゆたか)

早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員

1950年東京生まれ。東京大学農学部卒。経済企画庁国民生活調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮社)など著書多数。

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