患者もつくる 医療の未来

2014年10月8日

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勝村久司 (かつむら・ひさし)

高等学校地学教諭、元厚生労働省医療安全対策検討WG委員

1961年生まれ。京都教育大学理学科卒業。高等学校地学教諭。1990年、陣痛促進剤による被害で長女を失い、医療事故や薬害などの市民運動に取り組む。厚生労働省の中央社会保険医療協議会や日本医療機能評価機構の産科医療補償制度再発防止委員会などの委員を歴任。2015年8月より群馬大学附属病院で腹腔鏡等で死亡事故が相次いだ事件の医療事故調査委員に就任。著書に『ぼくの星の王子さまへ』(幻冬舎文庫)、共著書に『どうなる!どうする?医療事故調査制度』(さいろ社)など。

 それでは、もはや私たちの生活とは無関係に感じる、「月」の影響はどうでしょうか?

出産は月よりも太陽との関係が深い

【図3】月齢別平均出生数(1998~2012年助産所)
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 インターネット上では、月の満ち欠けと出産について、「満月の夜にはお産が多くなる」など、様々な情報等が飛び交っていますが、事実はどうなっているでしょうか。生命は、海で誕生し、進化の過程で陸上に進出してきました。その途中の浜辺の生物では、月の満ち欠けや潮の干満に呼応して受精・産卵するものもあります。したがって、「人」の出産と月の満ち欠けに関連性があっても不思議ではありません。

【図3】は、1998年から2012年までに助産所で生まれた全ての赤ちゃんを、月齢ごとに分けて平均値で表したグラフです。月齢0が新月、月齢15が満月になります。助産所で生まれる赤ちゃんは、1日あたりの平均は30人弱ですが、【図2】の太陽との関係のグラフと比べると、月との関係はほとんど無いというのが事実です。

【図4】月齢別平均出生数(拡大)(1998年~2012年助産所)
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 しかし、ほんのわずかですが、不思議なリズムを感じることはできます。【図4】は、【図3】のわずかな変動を拡大したものです。これを見ると、何らかの周期がありそうだし、複数の周波数の波が重なっている可能性も感じます。

 さらにこのデータをいろいろと解析する中で、一つ、興味深いグラフを作ることができました。それが【図5】です。この図は、新月から満月までの期間が約15日であることから、それぞれの月齢の日を中心に前後1週間、すなわちその日を中心にした前後計15日間の平均値をとり、その結果の数値を月齢2日分ごとに平均してみたものです。そうすると、結果として、【図2】と同じようなリズムを見いだすことができました。

【図5】月齢別平均出生数(1998年~2012年助産所)15日移動平均の2日平均
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 現在、1984年から2013年までの30年分のデータを元に、よりきちんとした統計の方法を用いてさまざまな分析をしているところですが、いずれにせよ、月齢との関連については【図3】が元データであり、今のところ、「満月の日にはお産が多い」と言い切れるほどの明確なリズムは浮かび上がっていません。

 インターネット上などでは、医療関係者の経験談として、満月の前後に多い、というようなものも記述されていますが、お産というのは本当に神秘的なものであるだけに、おそらく、何らかの心理的なバイアスがかかっているのかもしれません。

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