世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月17日

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 米スミス大学中国史および環境問題担当教授のDaniel K. Gardnerが、9月15日付インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ紙掲載の論説で、中国の環境は最悪であるが、その結果、国民の間に環境問題への自覚が高まり、政府がより積極的な対策を取るようになった、と述べています。

 すなわち、1969年米国オハイオ州のエリー湖に流入するクヤホガ川で火災が起こった。油にまみれ、ガスの泡が噴出している川が、自然に発火し、米国中に衝撃を与えた。クヤホガ川の火災は警鐘となり、1970年代初期までに米国で環境問題が強く自覚されるようになった。

 30年にわたる工業化の結果、水、空気、土地が汚染された今の中国は、1960年代後半の米国と似ている。中国人は、工業化によって環境への代価が高くつきすぎたと感じ始めている。

 PEW研究センターの世論調査では、2008年には「大気汚染は極めて大きな問題」と答えたのは31%であったが、2013年には47%がそう答えた。石炭火力発電、化学工場、石油精錬所、ごみ焼却炉などの建設に反対する運動が広まり、公害は、いまや中国の社会不安の主たる原因になっている。

 2013年は、ひどい年だった。1月には、北京の大気は、空港の喫煙室の空気より汚れ、昼間が夜のようだった。その後、似たような大気汚染が、上海、天津、漢口などの都市で見られた。3月には、上海に水道水を供給する黄浦江に豚の死骸が浮かび、2週間で1万6000の豚の死骸が上海を通った。上流の農家がウィルスに侵されて死んだ豚を捨てたらしい。

 2013年に中国政府は、地方の村には癌の発生率が異常に高い、いわゆる「癌村」があることを認めた。これらの村は通常、危険な廃棄物を排出する工場の下流にあり、村人は汚染された川の水を飲んだり、灌漑に使ったりしていた。このような「癌村」は現在450以上あるという。

 2013年5月、中国で最大かつ、もっとも繁栄している市の一つである広州で販売されているコメの44%が、危険水準を上回る発癌性の高い金属カドミウムを含んでいることが発表された。また、米、中国北部の住民の寿命は南部に比べ5.5年短く、それは、北部の方が石炭への依存が高いからであるとの研究結果がある。WHOなどの報告によれば、中国では、120万人が大気汚染のため早死にしたそうである。

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