2024年12月22日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年8月5日

 7月20日、上海福喜食品が期限切れの肉を混入したチキンナゲットを出荷していた事実がメディアにより暴露された。きっかけは上海の衛星テレビ『東方衛視』の報道番組であった。元従業員の内部告発を受けた『東方衛視』が2カ月間にも及ぶ潜入取材を行った結果、同社の生産現場で信じられないモラルハザードが起きていたことが明らかになったのである。同テレビが暴き出した映像には、地面に落ちた肉を何のためらいもなく機械の中に戻す従業員の様子や、表面が青く変色した肉を悪いと知りながら使い続けている実態などが映っていて、消費者に大きな衝撃を与えた。

 さらに上海福喜食品が、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、ピザハットといった世界的に名の通ったファーストフードチェーンやコンビニに製品を卸していたことで、問題は国境を越えた広がりを見せていったのだった。

 日本でもマクドナルドとファミリーマートが同社との間に取引があったことを認めたため、メディアは連日この問題を大々的に報じることとなった。

中国の消費者にもある程度共有されている
「罪の意識の薄さ」

 日本のメディアからすれば、久しぶりに中国から届いた”呆れた食の実態”だった。さらに日本人が中国に対して抱くイメージとも重なり、まるでお祭り騒ぎの様相となった。

 興味深いのは、こうした第一報がひと段落した後に出てきた分析記事であった。その主な内容は、今回の騒ぎの裏にある当局の意図をさぐるもので、「報道は国が裏で糸を引いていた」、「外資たたきのための仕掛け」、「国有企業であったら追及されていなかった」といった見立てであった。

 この考え方の裏側にあるのは、メディアは常に当局のコントロール下にあり、メディアの動きには必ず当局の意図が隠れているという思い込みだ。半知半解の副作物と言わざるを得ない。


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