あるプロ野球選手は、試合中、ベンチで選手名鑑を見てモチベーションを上げるのだという。なぜか? 名鑑には全選手の年俸が書いてあるからだ。
「アイツ、こんなにもらってやがるのか。絶対打ってやる!」
プロ野球界とは、残酷なまでに選手の「格」が年俸という数字に表れる世界である。二刀流で活躍する日本ハムの大谷翔平が高卒3年目となる来季には1億円を突破すると見込まれているように、年齢など関係のない非情な実力社会なのだ。相手がナンボほどの“給料”をもらっているのか、それは間違いなく選手を奮い立たせる燃料になる。
補強に積極的な阪神、ソフトバンク
昨年の日本シリーズがまさに「格差」シリーズだった。
巨人が年俸総額38億円以上で12球団中1位だったのに対し、楽天は同18億円余りで第10位(年俸は推定、以下同)。たとえば第1戦の先発マウンドに立った楽天の則本昂大(1200万円)と巨人の主砲・阿部慎之助(現役最高額の5億7000万円)の対戦などは、年俸差47.5倍という途方もない開きがあった。
それでも第7戦までもつれたシリーズを制したのは楽天の方だった。もちろん田中将大という、のちにヤンキースと7年総額約160億円の超大型契約を結ぶことになる絶対エースがいたとはいえ、資金力の面から言えば、見事なまでの「下剋上」を成し遂げたシリーズだったのだ。
そして今年の日本シリーズには、セ・リーグからはCSファイナルステージでリーグ覇者の巨人に4連勝を飾った阪神が、パ・リーグからは同ステージで粘る日本ハムを振り切ったソフトバンクが出場する。ともに関西と九州に熱烈なファンを抱える人気球団だ。ソフトバンクは3年ぶり、阪神は9年ぶりの出場とあって、地元を中心に大いに盛り上がることは間違いない。
そんな両球団のもう一つの共通項が、特に近年、積極的に補強を行ってきたことである。
今季の年俸総額はソフトバンクが37億5100万円、阪神が31億8500万円で、これは12球団中2位と3位にランクインする(1位は巨人の45億1200万円)。昨季4位に沈んだソフトバンクは王座奪還に向けて次々と大物選手を獲得、年俸総額で約13億円を上積みした。阪神は昨季リーグ2位とはいっても巨人に12.5ゲームという大差をつけられた。やはり8億円以上の年俸を加算して今季に臨んでいる。
両チームの年俸総額には6億円近い開きがあるが、昨年の対戦カードに比べればその差はなきに等しい。今シリーズは大型補強を断行したチームどうしの、日本一をかけたガチンコ勝負と言えそうだ。
阪神打線とソフトバンク投手陣が火花を散らす
ここで、今シリーズで出場が予想される選手のラインアップを見てみたい。