チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年11月14日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

11月10日に開かれた日中首脳会談について、識者の評価は割れている。積極的な評価を下す石平氏。小谷哲男氏は、会談によって日中がスタート地点に立ったと一定の評価をしながらも、今後対話を進めていくうえでの不安要素を指摘する。また、佐々木智弘氏は会談実現に至った中国側の事情を、『人民日報』をもとに解説する。本稿では、「本当にやるべきだったのか」と疑問を呈し、その理由とあるべきタイミングについて考える。そのうえで、今回のAPECでは、中国があげた外交成果に注目すべきだという。

 11月11日、北京の保養地「雁栖湖」で行われてきたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が首脳宣言を採択して閉幕した。

 日本の報道機関は、10日、日中首脳会談――中国側は会見と表現していたが――がおよそ2年半ぶりに行われたとあって盛り上がり、紙面を大きく割いて報じたのだった。試みにいくつかの新聞の11日付の見出しを並べて見ると、

〈日中 関係改善へ一歩〉(読売新聞)
〈海上連絡の早期運用合意〉(毎日新聞)
〈日中 互恵関係を再構築〉(産経新聞)

 と一様に日中が関係改善に動き出したことを強調する見出しとなっている。

 だが、現実はすでに多くのテレビが映像を伝えたように、習近平主席は安倍晋三総理と目を合わせようとはしないという冷ややかな態度で応じたのである。新聞がどんな見出しで煽ろうと、この会談が日中関係の画期になると考える日本人は少なかったに違いない。

「日本から譲歩を引き出した」と大々的に報道

 私自身、事前の取材では好感触が何もなく「首脳会談の可能性は40%」と言い続けてきたこともあって、会談実現には驚きを感じたのだが、ふたを開けて見ると「やるべきだったのか」と疑問になるような内容だった。

 事実、北京の外交関係者はこう語りため息をつく。

 「外交部ルートでは会談実現を後押しするために奔走していました。ですが党内にはまだ抵抗する勢力がありギリギリまで会見を見送るという選択を残していました。そのことは会見するとの決定を日本側に伝えるのが直前になったことでも分かるでしょう」

 取材の頭撮りでは習近平主席が険しい表情のまま、安倍総理が語りかけた言葉を通訳が説明するのを無視して横を向いてしまい観る者を驚かせた。

 このほか、安倍総理を待たせるという演出や握手の場面でもバックに両国の国旗が置かれていないなど気になったことは多々あったが、要するに中国が日本の首相を歓迎していないことがよく伝わる会談であった。

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